第5回モーニング娘。もAKBも 熱を生む「アイドル活動に参加する快感」

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 「スター誕生!」「ASAYAN」……。アイドルオーディション番組は、昭和・平成・令和と形を変え隆盛し、数々のスターとファンの熱狂を生んできました。「アイドルの歴史はオーディション番組とともにあった」と語る社会学者の太田省一さんに、時代を超えて続く人気の理由や、近年の番組の特徴について聞きました。

 ――アイドルオーディション番組は、日本ではいつごろ始まったのでしょうか。

 今につながるアイドルオーディション番組の出発点となったのは、1971年から始まった「スター誕生!」です。作詞家の阿久悠さんが企画しました。

 阿久さんは「番組内でできるだけ下手な人を選んだ」と著書に書いています。お茶の間で見るテレビが国民的娯楽になった時代、「1億総中流」と呼ばれた時代には「親近感が大事」だから。最初に合格したのが当時13歳の森昌子さんでした。

 ――森昌子さんは素晴らしい歌い手として知られています。当時から、「下手」ではなかったのでは?

 確かに、当時の森さんは歌も抜群にうまかったです。ただ、まだ幼くて、素朴さを感じさせる部分も多かった。そういう素人らしさを残した子が、プロの指導を受けていろんな課題を克服し、成長していく。それまでの歌手はデビュー前のプロセスは見せませんでした。だから私自身、番組を見ていて「歌手の裏側」を知ってしまったようなカルチャーショックを受けたのを覚えています。

 ――番組の中で成長のプロセスを見せるというようなオーディション番組の手法は、この頃から始まっていたのですね。

 番組では、審査員の講評を聞くことができ、また参加者が洗練されていく様子がわかる。視聴者は「歌手ってこうやってできあがっていくのか」と目の当たりにして、「あの子はこうすれば売れるんじゃないか」というプロデューサー的視点を持つようになります。今はやっている視聴者参加型オーディション番組の原点ですよね。

経済の停滞が新たな形を生んだ

 ――平成にはテレビ東京系の番組「ASAYAN」でのオーディションが話題になりました。

 90年代、バブルが崩壊し、経済が停滞しました。そんな時に、ASAYANで、本番のオーディションで優勝できなかった人たちを集めてデビューしたのが「モーニング娘。」でした。メジャーデビューのため、「CDを5日間で5万枚手売りできたら」という条件を与えられ、メンバーがそれを苦労して実現する様子も番組で放送されました。ASAYANでは、スター誕生!にはまだあったようなバラエティー番組的要素が少なくなり、参加者の真剣な姿を見せるようなドキュメンタリー性が強くなりました。

 社会のセーフティーネットが弱くなり、受験や出世競争など、弱肉強食の度を増していく現実世界での「試練」を乗り越えることは、つらく困難なものです。でもASAYANは、途中で脱落しても前向きな参加者の姿、参加者同士で助け合う姿など、競争をポジティブにとらえてみせ、人気を呼びました。

時代の移り変わりを反映してきたオーディション番組。記事の後半では、AKB48が与えた影響や、アイドルへの誹謗中傷が激しくなった理由などについて語ります。

■「プロデューサー的視点」が…

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この記事を書いた人
林瞬
コンテンツ編成本部
専門・関心分野
漫画やアイドルなどのサブカルチャー、ジェンダー