鹿児島県奄美大島で、防除事業が続けられていた特定外来生物マングースの根絶宣言が発表された。これまでの捕獲数は3万匹を超える。なぜ防除するのか、防除の痛みをどう受け止めればいいのか。外来種問題と長年向き合ってきた池田透・北海道大名誉教授(保全生態学)に話を聞いた。
――環境庁(当時)の本格的な防除事業がスタートしてから、根絶宣言まで四半世紀近くかかりました。
これほど大きな島で、侵略性の高いマングースを根絶できたという成果をまずは大いに評価したいと思います。四半世紀というと長くかかったように思うかもしれませんが、これだけの年月で本当によく根絶に至ったと思います。
根絶の達成には、外部からの新しい個体の流入を防げること、防除のスピードが対象の生き物の繁殖スピードを上回ることなどの条件が必要です。こうした条件から根絶の実現可能性を算出し、奄美のマングース防除は取り組まれました。きちんと科学的根拠に基づき達成された成果でもあります。
根絶がゴールではない
――根絶宣言はどういうステップとして位置づけられるのでしょうか。
決してゴールではありません。これだけの根拠を積み重ねていてもマングースが島に残っている可能性はゼロではありませんし、再び島に侵入する可能性もあります。引き続き、監視を続けることが必要です。
なにより、なぜマングースを防除していたのかを忘れてはいけません。奄美の豊かな自然を守り回復させるためだったはずです。根絶で終わりではなく、世界自然遺産にもなる奄美の自然を後世に残していくことも、大切なことです。
そういう意味ではまだ道半ばと言えます。
――侵略的外来種の防除は奄美以外の地域でも課題になっています。成果は他の地域に応用できるでしょうか。
日本でも外来種問題への意識が浸透し、各地で防除事業が取り組まれています。ただ、科学的な根拠もないまま、すぐに根絶などと目標を掲げてしまうところもあります。
生物多様性保全の先進国であるニュージーランドでは、対象の生き物について根絶の実現性が低い場合、まずは封じ込めや個体数の低減といった実現可能な目標設定をします。やみくもな根絶目標で失敗すれば、「無駄な殺生だった」「こんな事業やるべきじゃなかった」と防除事業そのものが否定されてしまうかもしれませんから。根絶事業は、ポーズでやってはいけないのです。
駆除は「かわいそう」なのか
――外来種とはいえ生き物を駆除するという行為は、「かわいそう」で受け入れがたいという意見もあります。
確かに防除事業の多くが対象…