作家・藤野可織さんと考える卵子凍結 「不安の解消」の裏にあるのは
女性が将来に備えて卵子を凍結して保存する「卵子凍結」への関心が高い。東京都が昨年始めた卵子凍結の助成事業には、大きな反響があった。その背後にあるものは。妊娠、出産をめぐる葛藤を作品につづってきた作家の藤野可織さん(44)と、取材に出かけた。
京都市の京都IVFクリニック。「ラボ」と呼ばれる培養室には、ずらりと顕微鏡が並んでいた。その奥、液体窒素の入ったタンクの中に、卵子が保存されている。藤野さんはマスクとヘアキャップをつけ、そっと部屋に入った。
卵子は加齢で老化し、数も減るため、健康でも卵子凍結をする女性が増えています。藤野さんと、医療機関や女性たちを取材し、背景を探りました。記事後半には、藤野さんの寄稿を掲載しています。
不妊治療を行う同院は、女性の選択肢を増やしたいと、約2年前から病気の治療に伴わない卵子凍結を始めた。希望者は増えていて、木下孝一医師は、この日も希望者の診察をしたという。
藤野さんは、5年前に出産してから、「心身ともにつらい」この体験が未来には楽になるのだろうか、と考え、出産をめぐる医療に興味を持つようになった。
「女性が卵子凍結を希望する理由は、仕事が忙しい、パートナーがいない、といううちの、どちらが多いですか」
増える選択肢「素晴らしい」 でも……
藤野さんが尋ねると、木下医師は、「理由は僕もびっくりしたんですけど」と、同院と系列病院が、2023年7月~24年7月に卵子凍結の初診を受けた人計60人中56人に実施したアンケート結果を見せてくれた。
卵子凍結を選択することで何…