「聖地」と呼ばれた喜界島 サンゴ礁段丘が「世界地質遺産」に認定
鹿児島県喜界島のサンゴ礁段丘が、国際学会が選ぶ「世界地質遺産100選」に認定された。サンゴ礁は約10万年間隆起し続けており、過去の気候変動など環境の変化を詳細に調べられることが世界的に貴重だと評価された。次は地域主導で教育や保全を図る「日本ジオパーク」への認定をめざしている。
「世界地質遺産」は、地球の成り立ちなどを理解する上で国際的に重要な場所で、地質学者らでつくる国際地質科学連合(IUGS)が2年ごとに世界で100カ所ずつ選んでいる。2022年の第1回選定では日本から玄武洞(兵庫県)と野島断層(同)が認定された。喜界島は今年の第2回選定で64カ国174候補地の中から平成新山(長崎県)などとともに選ばれた。
喜界町の隈崎悦男町長とNPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所の渡辺剛理事長は認定後の8月下旬、韓国・釜山であった国際会議で島の特徴などを発表。今月3日には県庁を訪れ、塩田康一知事に認定を報告した。
渡辺理事長によると、喜界島がサンゴ礁の隆起でできた島であることは早くから知られ、保存状態のよいサンゴ化石が露出していることから、研究者の間では「聖地」と呼ばれていたという。10年前に島の廃校跡に研究所を立ち上げ、研究者や学生を受け入れてきた。
生物多様性をはぐくむサンゴ礁の島に人々が寄り添うように暮らしており、文化の多様性も豊かだという。渡辺理事長は知事への報告で「文化人類学や考古学、社会学、地震学などの研究者も島に来るようになった。サンゴ礁を研究したいという子どもたちも島外から『サンゴ留学』で集まっている」と語った。
ただ、喜界島は奄美大島の東約25キロに浮かぶ「離島の離島」。1980年代に1万人を超えていた人口は約6千人に減った。隈崎町長は「これを機にもっと喜界島を知ってもらいたい。人口減少をなんとか食い止め、交流人口を増やしたい」と話した。
町は、10万年隆起し続けるサンゴ礁の島をテーマに、日本ジオパークの認定に向けた活動にも取り組んでいる。昨年10月には公募でロゴマークを決定。来年の認定申請をめざすという。