〝戦犯〟からの雌伏と再脚光 立憲・野田代表の「人間万事塞翁が馬」

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政治学者・山本健太郎=寄稿
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 自公が過半数割れに追い込まれ、立憲民主党が大躍進を果たした27日の衆院選。政党の合従連衡を研究してきた政治学者の山本健太郎・北海学園大教授は、立憲代表の野田佳彦氏が「民主党政権最後の首相」で大敗を招いたかつての〝戦犯〟から、10年を超える雌伏の時を経て重厚な政治家として復活した経緯に注目する。「政権交代」再びはなるのか。来夏の参院選に向けた政界の動きについての読み解きを寄稿した。

政治学者・山本健太郎さん寄稿

 立憲民主党の野田佳彦代表を見ていると、「人間万事塞翁(さいおう)が馬」という故事が思い浮かぶ。

 民主党政権最後の首相として、既に苦境にあった政権の「しんがり」を任され、三党合意での消費増税を党分裂を伴う捨て身で成し遂げたが、その引き換えの衆院選で惨敗を喫し、敗軍の将となった。政治家は、職を失うことに直結する選挙を恐れる。それゆえに、敵味方を問わず自分の再選を脅かした存在には拭い去りがたい恨みを持つ。野田氏は、多くの討ち死にした仲間の政治家からの憎悪を一身に浴び、長い事実上の隠居生活を余儀なくされた。

 第2次以降の安倍晋三内閣が我が世の春を謳歌(おうか)するなか、野党は多弱状態に陥った。民主党の後継政党となった民進党の代表に蓮舫氏が就いた2016年、野田氏は後見人的な立場で幹事長となる。下野から4年。大敗の傷はまだ生々しかったか、この人事は党内から反発を浴びる。さしたる実績を上げられないまま蓮舫氏が翌年に退任すると、野田氏は再び表舞台から去った。

追悼演説が思い起こさせたもの

 野田氏に再び脚光が当たるのは、皮肉なことに自らを政権の座から引きずりおろした安倍氏への衆議院本会議場での追悼演説だった。渾身(こんしん)の演説は野田氏が首相経験者であったことを改めて人々に思い起こさせ、かくなる重厚な政治家が野党の中に眠っていたことを世に知らしめた。リベラルに傾斜しているとみなされ、数の上では最も多い中道付近の有権者にそっぽを向かれた立憲民主党を救う存在として、一躍注目を集めるようになったのだ。

 低迷する党の切り札として代表に選ばれた直後のこの衆院選で、野田氏率いる立憲民主党は50議席増の148議席を確保した。最大野党は国政選挙で議席を増やして、次の政権を担いうる党だと人々に認識してもらわねばならない。その期待があってこそ、党首の求心力も高まる。今回の結果で、この条件はクリアした。野田氏はこれまで以上に首相候補の一人とみなされるようになるだろう。

 時の流れは通常、政治家にと…

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