線路上歩行、高台の山…世界津波の日、制定きっかけの地で避難訓練

寺沢尚晃 菊地洋行 勝部真一 松永和彦
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 国連が「世界津波の日」と定める5日、津波の日制定のきっかけとなった和歌山でも、各地で避難訓練があった。いざという時への備えを確認した。

 「世界津波の日」の5日、広川町で津波の避難訓練があった。線路上に列車を停止させ、乗客は近くの神社に走って避難した。

 JR西日本などが毎年実施し、今年で9回目。近隣の小学生ら約350人が参加した。

 「マグニチュード9.1の南海トラフ巨大地震が発生」したとの想定。津波発生を予測した乗務員は乗客を近くの避難場所まで誘導。乗客は津波避難場所に指定されている広八幡宮までの400メートルを走った。

 「世界津波の日」は、安政南海地震(1854年)の際に広川町の実業家・浜口梧陵(ごりょう)が稲わらに火をつけ、村人を高台に導いたという逸話「稲むらの火」にちなみ、2015年に制定された。この日は町内の津波防災を学ぶ施設「稲むらの火の館」が無料になった。

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 和歌山県新宮市緑ケ丘2丁目の県東牟婁振興局でも地震や津波に備える防災訓練があった。午前10時、模擬の緊急地震速報が庁舎内に放送されると、職員は机の下に入るシェイクアウト訓練を実施した。

 その後、防災担当者が若手の職員たちに県庁本庁舎と連絡をとるための衛星電話や、無線機など非常用機器の保管場所や使い方などを伝えていた。

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 「世界津波の日」に合わせて5日、和歌山県田辺市では津波浸水想定区域にある幼稚園や保育所、認定こども園を対象にした津波避難訓練を実施した。

 午前10時ごろ、非常に強い揺れを感じる地震が発生し、県沿岸部全域に「大津波警報」が発表されたと想定。同区域にある7施設の園児らがそれぞれの津波一時避難場所に避難した。

 昭和幼稚園(高雄2丁目)では、町内会の住民らも協力。3歳児から5歳児クラスまでの園児ら約230人が約400メートル離れた、高さ36メートルの愛宕山へ避難した。年長組は年少組の手を引くなどして歩いた。同園では、津波の心配がある時の避難場所と説明しているが、「怖がらせてはいけないので、散歩気分で出かけられるように配慮した」と●(こむぎ)貞彦園長は話していた。

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 和歌山市の和歌山下津港西浜地区などでは4日、国土交通省や警察、自衛隊など約120の機関が参加した「大規模津波防災総合訓練」があった。すさみ町や串本町、堺市でも別会場が設けられ同時に訓練が実施された。南海トラフ巨大地震の発生を想定し、陸海空が連携を確認した。

 岸本周平知事は5日の定例会見で、「多種多様な訓練を目の当たりにし、関係機関は危機感を持ったと思う。南海トラフ地震が想定されている。いま一度、県民のみなさまには我がこととして備えていただきたい」と呼びかけた。

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この記事を書いた人
菊地洋行
和歌山総局|新宮・熊野地区担当
専門・関心分野
地域の話題、国際情勢
松永和彦
和歌山総局
専門・関心分野
高校野球、吹奏楽、地方行政