「おふくろの味」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。肉じゃが、母親の得意料理、ふるさとの郷土料理――。歴史地理学者の湯澤規子さんは、「『おふくろの味』は作られた幻想にすぎない」と指摘します。
高度成長期に再評価されたもの
「おふくろの味」というのは、人によって思い浮かべるものがバラバラで、実体があるようであいまいな不思議な言葉です。受け取るメッセージも男女で異なる。ほっこりとしたものに包まれているけれど、一皮むくと多分に政治性を帯びた言葉でもあります。
おふくろの味は、高度経済成長期の地方から都市への人口移動や農村の食生活の変化によって土台が生まれます。郷土の料理や家庭料理が「失われたもの」として発見され、再評価されてゆく。専業主婦が多くなり、「お母さんがご飯をつくる」という家庭像も定着しました。
批判された「お母さん食堂」
1970年代以降はメディア…
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- 【視点】
■食の幻想を粉砕せよ 誰にでもわかるように、『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部の空条仗助風にいうと「グレートでスよ。こいつはぁ〜!!」という感じである。何の話かというと、湯澤規子のご著書、『「おふくろの味」幻想』(光文社新書)と、この記事で
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