闇バイト緊急対策まとまる 「どこに連絡したら」、なお残る課題
闇バイトが絡む強盗事件の相次ぐ発生を受け、政府は17日、緊急対策をまとめた。各省庁が本格的な対応に乗り出した形だが、課題はなお残ったままだ。
緊急対策には、闇バイトで犯罪に加担する入り口となりかねない「雇用仲介事業者」の求人サイトについて、掲載前の審査の厳格化が盛り込まれた。
厚生労働省は昨年3月と今年11月、業界団体に求人情報の事前審査などを要請してきたが、スポットワークの仲介サービスに闇バイトとの関連が疑われるような求人が掲載される問題が起きた。
厚労省は今後、個別の仲介事業者の取り組みまで確認し、必要があれば指導する。業界団体にも改めて取り組みの強化を要請する。
スポットワーク大手のタイミーは今月6日、求人者の実態を公的書類で確認するといった不正利用対策の強化を発表した。ただ、厚労省幹部は「仲介サイトを経由した闇バイトの募集は数%。大半はSNSや知人を通じた募集で、仲介事業者の対策だけでは限界がある」という。
そのため厚労省は、募集情報に求人者の名称、住所、連絡先、業務内容などの表示がない場合は職業安定法に違反するという法令解釈を新たに示した。違法な募集情報だと明確にすることで、SNS事業者に削除を促す。
「どこに連絡したらいいのか」
強盗などで「指示役」から「実行役」への連絡に使われる秘匿性の高い通信アプリをめぐっては、対策の限界も浮き彫りとなった。
「シグナル」などの通信アプリは、通信記録が残らず、一定時間が経つとメッセージが消える。こうした特性は犯罪グループの指示役の特定を阻み、「捜査上の大きな隘路(あいろ)となっている」(警察庁)。
ただ、秘匿性の高さは利用者のプライバシーや安全性を守るメリットもあり、海外では政府高官やジャーナリストもシグナルを使っている。権威主義国で政府の検閲を避けるために利用されてきた経緯があり、国がサービスそのものに制限をかけることは、国民のプライバシー保護と対立しかねない。
また、対策ではシグナルやテレグラムに日本法人窓口の設置を働きかけるとするが、「どこに連絡したらいいのかも含めて検討する」(総務省)という状況で、連絡ルートがまだない。さまざまな要請が実現するかは見通せない。
■「単純な話ではない」…