今年の科学成果、トップは予防効果高い抗HIV薬 米サイエンス誌

有料記事

川原千夏子
[PR]

 米科学誌サイエンスは12日付で、2024年の最も重要な科学的成果を発表した。1度の注射で半年間の感染予防効果のある抗HIV(ヒト免疫不全ウイルス)薬「レナカパビル」を筆頭にあげた。

 レナカパビルは米製薬大手ギリアド・サイエンシズ社が開発。感染リスクが高い人を対象に、あらかじめ予防投与する「暴露前予防内服(PrEP=プレップ)」の試験で極めて高い有効性を示したほか、HIVの構造や機能の理解から生まれた薬であることを評価した。世界のHIV新規感染者数は2011年の210万人から2023年は130万人に減少した。米国立アレルギー感染症研究所のジャンヌ・マラッツォ所長は「最も困難な地域でHIVの発症率を劇的に減らす」としている。

 このほか、自己免疫疾患で患者自身の免疫細胞を「改造」して治療に使うCAR(カー)―T(ティー)細胞療法の進展、米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による初期宇宙の探査、米宇宙企業スペースX社による発射後のロケットの「キャッチ」成功、「第3の磁性体」の証明、古代DNA抽出技術の向上などをあげた。

 一方、残念なニュースとして、ウクライナパレスチナ自治区ガザでの戦争が、研究施設の破壊や予算の削減など科学に損失をもたらしていると指摘。国連気候変動会議(COP29)やプラスチックごみ汚染に対処する条約策定に向けた環境交渉の行き詰まりもあげた。

サイエンス誌が選んだ重要な科学成果

■サイエンス誌が選んだ202…

この記事は有料記事です。残り235文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2024年12月19日11時0分 投稿
    【視点】

    レナカパビル、CAR-T療法、RNA農薬など、実用に直結しそうな成果が注目されているのが興味深い。日本ほどではないがアメリカでも分野によっては科学研究予算獲得には苦労しており、トランプ政権になるとさらにその傾向は強まると予想される。推測では

    …続きを読む