森秋彩が語る競技者とパン職人の共通点 五輪前にバイトを始めた理由
安藤仙一朗
パリ五輪まで1年を切った昨年の冬、スポーツクライミングの森秋彩(あい)は思い立って街のパン屋さんでアルバイトを始めた。
通信制高校から筑波大の体育専門学群に進んだ21歳には、ある悩みがあった。
「私は部活をやったことがなく、上下関係を知らない。体育会の世界で生きてきた学校の友だちの中にいると、社会経験が欠けているなと」
授業があるから、シフトは早朝から午前9時まで。週4日出勤することもあった。
選手として世界を転戦していることは、店長以外には内緒だった。「言っちゃうと、私を怒りにくくなってしまう。ダメダメのアルバイトとして、ビシバシ言ってもらいたかった」
だから、五輪中継で初めて森の「正体」を知った同僚もいたという。
五輪前といえば競技に集中したい時期のはず。アルバイトは、大胆な選択に映る。
もともとパン好きで、母親と…
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