第2回コギャルとトー横キッズ、違いは「世界が終わる」 小説にした95年

有料記事1995年からの現在知

堀越理菜 平岡春人
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連載「1995年からの現在知」

 2024年にテレビ東京で放送されたドラマ「95」は、1995年の渋谷を舞台に、大人のつくった社会にあらがいながら熱く生きた高校生たちを、高橋海人や中川大志らが演じ話題となった。原作者の早見和真さん(47)にとって、1995年3月20日は、自分をつくった一日だ。その日わき上がったのは、無力な自分への憤りだった。終わらないどころか、さらに苦しみが増していく世界で、小説家として95年のその先を考え続けている。

30年前、戦後半世紀の節目の年に阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件といった未曽有の出来事が相次ぎました。1995年を起点として私たちの社会や文化の変容を考えます。

 ――95年当時、早見さんは高校生で、野球の名門・桐蔭学園(横浜市)の野球部員でした。

 地下鉄サリン事件があった3月20日は、高校2年生の終業式でした。けれど、会場のホールに来ていない人がたくさんいて、何これと思いました。そうしたら、地下鉄で毒がまかれたみたいな、信じられない話ばかり入ってきた。

 昨日一緒にしゃべっていた友達が死んだらしいといううわさまで流れた。人生は突然終わるんだ――。死が一気に身近になった。あの日から、悔いを残して死ぬことに対する恐怖がずっと残っているくらい、インパクトがありました。

 渋谷には、しょっちゅう遊びに行っていて、この日の午後も出かけていった。そこで、同世代が「援助交際」をしているのを初めて見かけました。

 道玄坂の下の電器店で地下鉄サリン事件のニュースを見ていたら、サラリーマン風のおじさんと、制服を着た同世代の女性が一定の距離を取りながら、通り過ぎていきました。一緒にいた友達と離れて追いかけていくと、2人は円山町の歓楽街に入っていった。

 同世代が死んだかもしれないということを初めて突きつけられた日に、同世代が自分の生(性)を切り売りしているところを初めて見た。完全に世界がおかしくなっている気がした。

 初めて、社会の中に自分も存在していると感じた。それなのに、何をしていいか分からない。無力感がありました。自分に対する憤りをすごく感じたのを覚えています。

終わることの方が希望だった

 ――2015年に発表した小説「95」は、95年の渋谷が舞台。主人公の広重秋久(Qちゃん)は品行方正な高校生だったけれど、早見さんと同じく、サリン事件と援助交際に同じ日に触れて、心が揺さぶられます。そんな中、これまで関わっていなかったクラスメートでカリスマ性のある鈴木翔太郎に突然呼び出され、仲間とともに大人がつくった社会にあらがい始めますよね。

 あの日のQちゃんは、僕なん…

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この記事を書いた人
平岡春人
文化部|映画担当
専門・関心分野
映画、音楽、人権