第19回「日本人との結婚は犯罪」領事館を100回訪ねて僕が下した決断
ステレンボッシュ〈南アフリカ南西部〉=遠藤雄司
連載「それでも、あなたを」南アフリカ・日本編②(完)
【南アフリカ・日本編①】黒髪の彼女と身長差40cmのダンス 近づいた2人、現れた人種の壁
東京の大学生、丸山みどりは学内で、南アフリカからやってきたハンスに出会います。実業家の父の反対に遭い、内緒で婚姻届を出そうとした2人ですが、受理されず。背景にはハンスの国がとっていた政策がありました。
1966年冬、東京。
ハンスは南アフリカ領事館の一室で、何時間も待ち続けていた。
アパルトヘイト(人種隔離)政策。南アフリカでは、白人とそれ以外の黒人やカラード(colored)と呼ばれる混血の人々などを法的に区別していた。
中でも、2人の結婚の最大の障壁となったのは、異人種間の結婚を禁止する「雑婚禁止法」だ。
南アの白人であるハンスと、アジア系である日本人のみどりとの結婚は、南アフリカでは法律違反であり、犯罪なのだ。
ハンスはあの日以来、南アフリカ政府の書類を出してもらおうと、領事館に粘り強く通い続けた。もう100回近いだろうか。
書類は出せないと繰り返していた領事も、次第に態度を軟化させた。「あなたの立場もわかる」と、申し訳なさそうな顔で同情してくれるようになった。
やがて、領事が折れた。書類を発行するための「交換条件」を出してきた。
「二度と南アフリカには帰ら…