青森リンゴが高くなる? 物流の「2024年問題」で壊れる地方経済

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中島嘉克 野田佑介
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 「国の偉い人たちは末端のドライバーのことを全く分かっていない」

 5月下旬、青森県八戸市の運送会社「ツーワン輸送」事務所。ドライバー歴約40年の佐々木善憲さん(60)が、怒りをあらわにした。前夜に東京を発ち、岩手で荷物を降ろし、八戸に戻ったばかりだった。

 「労働時間が長い、残業も多い、休みも少ない、だけど給料がいい。だから、ドライバーをやってきた。それが『労働時間を減らしましょう、給料も下がります』では、やっていけない」

 働き方改革の一環で4月から、ドライバーが働ける時間が短くなった。2019年施行の働き方改革関連法で、トラックドライバーや医師らが対象となる5年間の猶予期間が終わったためだ。

月10万円収入減るドライバーも

 例えば、1日の拘束時間は最大16時間から15時間に短くなる。その分、ドライバーの稼ぎは下がり、物流も滞る。これが「物流の『2024年問題』」だ。長時間の勤務が当たり前だったドライバーの中には、稼ぎが減ることに対して不満や不安を抱く人も多い。

 青森県南東部の八戸市は、太平洋に面した全国屈指の水産都市。工業団地が整備された北東北随一の工業都市でもある。

 約100人のドライバーがいるツーワン輸送は、主に県内で作ったプラスチック製品や紙製品、野菜などを600キロ離れた関東に運ぶ長距離輸送を担う。関東からは雑貨などを積んで八戸に戻る。

 八戸―関東間はこれまで3日間で往復していたが、4月以降は残業規制に対応するため、4日間に伸ばした。結果、1人の運転手が往復できる回数は月に2回減った。

 「2回減ると、月10万円は収入が変わる。稼げなくなるからと、辞めていったドライバーも何人かいる」。ツーワン輸送の葛西建彦専務(46)はため息をつく。運べる荷物量が減ると、その分、会社の売り上げも落ちる。

 そもそも、運送業界は深刻な人手不足なのに、規制強化で拍車がかかる恐れがある。地元出身の従業員が中心のツーワン輸送は昨年中にドライバーの賃金を5%超増やす賃上げに踏み切り、離職防止や採用増に乗り出した。

 だが、その原資の大半は持ち出しで、会社の利益を圧迫。荷主から受け取る運賃は、思うように上がっていない。

 「中小零細が多い運送会社は立場が弱い。荷主と交渉ができない」と葛西さん。規制強化を受けてこの1年、荷主も以前よりは価格交渉に応じるようになったが、軽油やタイヤの価格も上昇。「納得できる運賃にはなっていない」と言う。

 さらに運送会社を苦しめるのが荷物積み下ろしの待ち時間の問題だ。ドライバーが荷主の元に着いても、荷物を積むまでに何時間も待たされることがある。

 これを短くできればその分、走る回数を増やせるが、改善が進まない荷主もいるという。

 「我々運送会社が長時間労働を望んでいるのではない。荷主が変わらないと我々も変われない。運送会社が立ちゆかなくなると、大消費地に工業製品や野菜を売り、成り立っている地方そのものが生きていけなくなる」

     ◇

誰がコストを負担するのか

 荷主側の対応を促すため、国も対策を進める。物流総合効率化法を改正し、荷待ち時間の短縮に取り組むことなどを義務化する。昨年には「トラックGメン」を発足させ、運送会社に不利な商慣習などを押しつけている荷主の監視にも乗り出している。

 ただ、地方経済の担い手である荷主側にも苦しい事情がある。

 運送会社の求めに応じて高額…

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この記事を書いた人
中島嘉克
仙台総局
専門・関心分野
デジタル、AI