「合理的解決」 約束の言葉に透ける予防線 被爆体験者と首相が面会
長崎の爆心地から約12キロ。原爆が落とされた当時、この圏内にいながら、被爆者と認められる人と、認められない「被爆体験者」がいる。
長崎市で9日、首相として初めて被爆体験者と面会した岸田文雄首相は「合理的に解決」を厚生労働省に指示した。しかし、政府に本気で「解決」する意思があるのかは不透明だ。
被爆体験者を前にしたあいさつの終盤だった。
「被爆から80年が経過しようとしている」と語った岸田氏は、こう続けた。
「政府として、早急に課題を合理的に解決できるよう、厚生労働大臣において、長崎県、長崎市を含め、具体的な対応策を調整するよう指示をいたします」
面会の終了後、厚労省幹部は「言葉通りに受け取ってもらうしかない」と話し、会場を後にした。
「解決」ではなく、「合理的に解決」。
この言葉づかいは、厚労省と官邸が事前にすりあわせたものだった。
1980年、旧厚生省の諮問機関は被爆者対策の意見報告をまとめた。
基本理念には「他の戦争犠牲者に対する対策に比し著しい不均衡が生ずるようであっては国民的合意は得られない」と記され、国による「被爆地域」の指定は「科学的・合理的な根拠のある場合に限定して行うべきである」と求めた。
これに沿って、厚労省は「科学的・合理的根拠がない」とし、被爆体験者を被爆者とは認めずにきた。
「しっかりと科学的評価」 武見厚労相は強調
この日、岸田氏が締めくくり…