第1回多様性の象徴、ハリスの戦略は 「アイデンティティー政治」の渦中で
9月10日、前米大統領ドナルド・トランプ(78)との討論会で、最後の発言の機会を与えられた副大統領のカマラ・ハリス(59)は、カメラをまっすぐ見据えた。
「私は、すべての米国人のための大統領になるつもりだ」
アメリカ大統領選2024 カマラ・ハリスの実像
8月に民主党の大統領候補となったカマラ・ハリスは、米国民の間でも、人物像や政策があまり知られてこなかった。どんな人物で、何を目指してきたのか。ハリスを直接知る人らへの取材を通じ、4回の連載で実像を探る。
そう訴えたハリスは、トランプを「人種を利用して米国民を分断しようとしてきた」と批判。米国社会の「統合」のメッセージを打ち出した。
「多様性」を期待されたハリス
ハリスはインド系の母とジャマイカ系の父を持つ。大統領選で勝利すれば、初の女性大統領になる。黒人女性、アジア系としても初めてだ。ハリスが多くの米国民に、民主党が重視する「多様性」の象徴として映ってきたことは確かだ。
ただ、ハリス自身が、人種や性別をことさらに強調することはない。背景には、アイデンティティー(自己認識)をめぐる米国内の激しい対立がある。民主党は、人種やジェンダー、性的少数者をめぐる課題に焦点を当て、多様なアイデンティティー集団の権利を擁護する運動を重視してきた。こうした潮流について共和党などからは「行き過ぎだ」との反発も根強く、対立の激しい「アイデンティティー政治」が展開されてきた。ハリスはその渦中にいる。
ある民主党関係者は、202…