連載「在来作物はいま」第2部(3)
月山山頂の山小屋に泊まると、2千メートル級の山の頂にあるとは思えないほどおいしい食事が食べられる――。取材先でそんな話を聞いたのは7月のことだった。
それも、メイン食材の月山筍(だけ)をはじめ、山菜やキノコは「月山のことはこの人に聞け」と言われる小屋の主が自ら採りに行くのだという。山とともに生きる姿に強くひかれ、9月上旬、山小屋へ向かった。
月山8合目から登り始め、3時間余りで山小屋へ。午後6時からの夕食には、月山筍を丸ごと使った天ぷら、自家製ごま豆腐のあんかけ、ブナハリタケやフキの煮物、コゴミのごまあえなど、山菜やキノコをふんだんに使った料理が並んだ。どれもみずみずしく、疲れた体に染み渡るようだ。
ただ、小屋の主で幼い頃から月山とともに生きてきた芳賀竹志さん(78)によると、かつては今のような料理ではなかったという。月山登山の目的が信仰から観光へと移り変わってきた中、山小屋を続けてこられた背景には、ある「気づき」があった。
地域で受け継がれてきた在来作物や伝統野菜は、収量が少なく手間もかかるといった難しさから、継承が危ういものも少なくありません。在来作物をめぐる連載の第2部(全6回)では、在来作物を食の現場から支える人たちを描きます。今回はその3回目。
道路開通で山は一変、小屋の廃業相次ぐ中で
月山山頂の月山神社本宮にほ…