フランスでかなった100のこと no.72 パリが一晩中アートにつつまれる「ニュイブランシュ」を体験
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50歳のときに「残りの人生でしたいこと」に「フランス人とフランス語でジョークを言って笑う」と書いてから10年ちょい。語学力なし、コネなしから始まったフランスへの旅。記録写真とともに100個マラソンしています。50個目で最初の願いが思いがけず成就。そこからは「したかったこと」から「かなったこと」として書いています。
写真はnoteのフォトマガジンとリンクしています
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ニュイブランシュ Nuit Blanche とは白夜のこと。
一晩中陽が沈まないという意味のこの言葉を使ったアートのお祭りがパリにあると知ったのは、さほど昔のことじゃなかったように思う。2016年に初めて陶芸家のともだちと2人展を行った時、下見にでかけたギャラリーで1人の和紙でインスタレーションを行う作家さんと出会い、彼女が「パリのニュイブランシュで、教会で大きなインスタレーションを行う」と言ったんだった。
紙は結構重い。
大きな教会の空間を埋めるだけの紙を日本からフランスに持ち込むだけでも大変なのよ、という言葉を聞きながら、ああ、なんて夢のような話なんだろうと思ったんだった。パリで展示なんて夢のまた夢だけど、ニュイブランシュってものにはいつか行ってみたいなあ。
公共空間で現代美術を紹介する一夜限りの芸術祭として、2002年にフランスのパリで始まったというこのイベント。世界中の複数の都市で行われているそうだけれど、日本ではまだまだ認知度は低いのかなー。
とにかく11月の週末一晩だけのイベントなので、なかなか遭遇するのは難しいと思ってた。
ら。
フランスでレジデンスと展示を終えて、前にも書いたけど、ギャラリーに売り込みに行って撃沈したりしてたあの頃。
帰国前のフリータイムな数日の中に、このニュイブランシュが開催されるという奇跡があったのじゃった。
しかも、その少し前に日本で知り合った音楽家の女性が、そこで演奏をするというじゃないの。
夢がひとつ、かなったなあと思った。
いつもアパートに泊まらせてくれていたNicoleは語学と美術の教師なので、一緒に行くことになった。
たぶん、ここが一番面白いと連れていってくれたのが、ポンピドゥーの近くにあるサントゥスタッシュ教会。
古くて中はちょっと煤けた感じの教会なのだけれど、そこがこんなことになっておった。
ライトは激しい速度で点滅して、色を変えていき、教会の中は爆音でアンビエント系の音楽が反響中。
広場から見える教会は、燃えているように見えた。
ぼけた写真しか残っていなくて残念。
でもすごかった。
ほかにもいくつか教会を回り、無数のインスタレーションを堪能して
レ・アルの広場に戻ってきたら、そこはダンスやらパフォーマンスのフェスとなっており
そろそろ帰ろうかと地下鉄の駅に向かって市庁舎前を通り過ぎたら、そこもお祭り騒ぎになっていた。
インスタレーション、映像、パフォーマンス。
そしてワインやケバブの出店。子供でいっぱいの回転木馬。
人、人、人。
パリ中が、アートで埋め尽くされていた。
夜中でも、子供がたくさん繰り出して楽しんでいて
ああ、ここはほんとうに豊かな場所だなとちょっとうらやましかったな。
フランスは、バカンスやお祭りの日は、めちゃ遅い時間でも子供と一緒に出歩いている人が多い。ベビーカーもたくさんあって、とにかく楽しんでやる! という熱量がすごい。
あ、おともだちの演奏もちゃんと見てきた。
すばらしかった。
めちゃかっこいい。
ニュイブランシュの日にパリにいられて、そこを一緒に住まわせてくれているNicoleが案内してくれていて、さらに知る人が演奏しているのを聞きにきている。
「わー、来てくれてありがとう!」
「すごいすごい、かっこいい!」なんて会話を交わせている。
人生の後半戦、こんな体験ができていることが、夢のようだなと思った。
これだけで夢のようなわけなので。
ニュイブランシュを教えてくれた和紙作家さんみたいに、ここに展示をするなんてことは考えもしなかった。
夢っていうのは、叶わないことも願っていいのだけれど、はるかに想定を超えるために願うこともしない、という分野はあるわけで。
つまり、願うという時点で、その願いは自分の身の程の中にある、ということなのだと思う。
ということで、ニュイブランシュに「参加」するなんてことは願いもしなかったのだけれど
人生は不思議なもので
その数年後
パリでない場所でだけれど
私はこのお祭りに参加することになる。
そんな話はまたどこかで。