白いコンバースをはいた花嫁、偽装結婚に間違われた花婿
街中で、突然鼻血が出る。のどの痛みと微熱が続く。
林都資恵(としえ)さん(47)の体に異変が表れたのは、3年前の春のことだった。
近くのクリニックで血液検査を受けると、「3日後の土曜日に結果を聞きに来てね」と医師から言われた。
5月25日、金曜日の朝7時。家のインターホンがなった。
一緒に住むパートナーの容(よう)さん(55)は、モニターに映るスウェット姿のおじさんを不審がり、出なかった。だが不審なおじさんは、2日前に検査を受けたクリニックの医師だった。
風呂上がりの都資恵さんの携帯電話には、何本も着信履歴が残っていた。
「ちょっと大変やから、入院の道具を持って、今日すぐに大きな病院に行って」
予想外の出来事に体が震える
阪急阪神百貨店の社員の都資恵さんは、勤め先に出勤するつもりだった。容さんは「お財布だけでいいんじゃない?」と考えていた。
紹介された兵庫県立西宮病院に着くと、すぐさま車いすに乗せられ、救急窓口から運ばれた。精密検査の結果、病名が確定した。
「急性骨髄性白血病です」
ここからの都資恵さんの記憶はない。
体を震わせて泣き続けた。Tシャツとデニム姿のまま、ビニールに覆われた個室に入院した。
都資恵さんと容さんの出会いは2005年。イタリア駐在から帰国した容さんが、都資恵さんと同じ職場になった。
「どこか日本人離れして、ダサいオールバック」。容さんへの最初の印象はあまりよくなかった。でも、服、食べ物、お酒、音楽とほぼ好きなものが同じだった。
12年からいっしょに住み始めたが、「夫婦よりも楽な関係でいい」と、都資恵さんがパートナーでいることを選んだ。
都資恵さんには両親もきょうだいもいない。治療の説明や今後の方針の話し合いなどの場面では、「家族」がいたほうがいいだろう。
「籍、入れようか」
容さんのプロポーズを、都資…