《この75年、耳や目が悪くてもいろいろな役をして活動しました。が、なさけないことも有りました》
昨年に朝日新聞が実施した「被爆75年アンケート」に寄せられた被爆者からの回答を読んでいると、ある女性のメッセージが目に留まった。今もその女性の記憶に残る「なさけないこと」ってなんだろうか。広島県坂町の、海近くの小高い丘にある家を訪れた。
西本和美さん(81)が玄関の前で迎えてくれた。耳に少し大きめの補聴器を付けている。両耳が全ろうで、補聴器がなければ何も聞こえない。2級の身体障害者手帳を持つ。「原爆で天井が頭上に落ちてきたときに、耳の神経がおかしくなっちゃってね」
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