圧倒的優位だったロシア軍はなぜ攻略失敗 専門家読み解く3つの理由

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高野遼=ワシントン 菊地直己 ロンドン=金成隆一
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 ウクライナの東半分を15万人の兵力でぐるりと取り囲んだロシア軍は、電撃戦で一気に首都キーウ(キエフ)を制圧し、傀儡(かいらい)政権を樹立する――。2月24日にロシア軍がウクライナ侵攻に踏み切った時、そう予測していた人は多いのではないでしょうか。あれから1カ月。米英の国防当局は、ロシア軍のキーウ攻略が失敗したとの見方を示すにいたりました。質、量の両面で軍事的に圧倒的な優位にあったロシア軍の進撃を阻んだのは何だったのでしょうか。三つのキーワードから探ります。

 ①制空権

 現代戦では、空域の支配が勝敗のカギを握るといっても過言ではありません。

 湾岸戦争イラク戦争で、米軍が序盤の作戦で徹底的に攻撃していたのはイラク軍の防空網でした。巡航ミサイル「トマホーク」や、近隣の航空基地や海上の複数の空母から発進した戦闘機による反復攻撃により、敵のレーダーや指揮通信システム、空軍基地の滑走路などを破壊。友軍機にとっての脅威を取り除いて制空権を奪い、上空からの援護を受けた地上軍が進撃しました。

 ロシア軍もウクライナで同じような戦い方をするだろう、というのが大方の専門家らの見方でした。

 戦略爆撃機B52のパイロットで、米国防次官補代理を務めたマーク・グンジンガー元米空軍大佐もその一人です。ロシア軍は侵攻後まもなく、ウクライナ軍の防空の要であるS300地対空ミサイルシステムを破壊し、飛行場の滑走路を爆撃して使用不能にするはずだと考えていたといいます。

 ところが、ロシア軍は初日こ…

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    駒木明義
    (朝日新聞論説委員=ロシア、国際関係)
    2022年4月1日21時10分 投稿
    【視点】

    ロシアによる侵略が予想以上に難航している一番の理由が、ウクライナ軍の頑強な抵抗にあることは間違いありません。2014年のクリミア半島のように無抵抗で占領されていたら、この記事に書かれているようなロシア軍の弱点は明らかにならず、国際社会の対ロ

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