第4回「助けて」浜美枝が聞いた古民家の悲鳴 20年かけて再生
《TBSラジオのトーク番組を始めたころの約40年前、新潟県朝日村(現村上市)の山奥にある集落がダム建設で消えるという新聞記事を目にする》
俳優・ライフコーディネーターの浜美枝さんが半生を振り返る連載「出会って、学んで、輝いて」。全4回の最終回です。
集落の暮らしを記録していた映像作家の姫田忠義さんと出会い、私も行くことに。愛読していた民俗学者、宮本常一先生の著作から学んだことは「自分の目で見て、歩き、感じる」ことの大切さ。市街地からバスや船などで2時間以上、秘境のような「奥三面(おくみおもて)」で実践しようと思ったのです。
集落の生計の中心は山菜、中でもゼンマイは名産品でした。42戸がたたずむ集落で女性がどんな暮らしをしてきたのかを聞くことが私の役目でした。一番親しくさせていただいたのは伊藤キイさん。彼女から「幼くて亡くなった子どもは墓地ではなく自宅の牛小屋の下にまつるの。そうするといつでも近くにいてやれるでしょ」などいろいろな話を聞くことができた。そしたら姫田さんが「浜さんはいいねぇ。女性同士だから私では聞けないような話が聞けて」。
姫田さんは、宮本先生の弟子です。「民俗学は何の役に立つか」という姫田さんの質問に対して、宮本先生は「昔は今につながり、今は明日につながる。つまり日本人の今を考え、明日を考える学問だ」と答えたそうです。姫田さんもそういった命のつながりを意識して、アイヌやスペインとフランスにまたがるバスク地方など国内外の民俗文化を映像で記録していったのです。
《1985年の閉村式に臨んだことが人生の分岐点に》
私もキイさんとともに家が解…