第1回「こんな世界を娘に見せられない」 母が向かった先はモスクワだった

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 「地下室に下りようよ。間に合わなくなるよ」

 3月上旬の真夜中、ウクライナ東部ルハンスク州の拠点都市セベロドネツクからモスクワに避難したばかりのユリア・アファナシエフスカヤさん(31)は、娘のズラータさん(7)の叫び声で目を覚ました。

 起きると、ズラータさんがおびえた表情で見つめていた。

 なんとかなだめて寝かせたが、翌日の深夜も、ズラータさんは暗闇の中で声を上げた。

 住み始めたばかりのアパートだったが、大家は「近所迷惑になる」と、行くあてのない2人に出て行くよう求めた。

 安全な場所に避難した後も、激戦地の悪夢を見続ける。それほどウクライナでの過酷な戦争は、少女の心を傷付けていた。

7歳には険しい道 でも懸命に歩いた

 ロシアが侵攻を始めた2月24日の直後、おびえた住民は買いだめに走った。店からは品物が消え、アファナシエフスカヤさんはマッチ一箱すら買えなかった。

 数日後、爆撃と砲撃が激しくなった。ドーンという爆発の音が鼓膜に突き刺さり、その衝撃は腹の奥まで響いた。

 「花火を打ち上げるすぐ横で、その5倍の音を聞いているような、ものすごい音でした」と、その恐ろしさを表現する。

 攻撃しているのがロシア軍なのか、ウクライナ軍なのかは分からない。ひたすら自分と娘に当たらないことだけを祈った。

戦火を逃れてモスクワにたどり着いた母親と娘。しかし、その暮らしは平穏とはほど遠いものでした。記事後半では、2人が生活する様子や、ウクライナに残した家族への思いなどを伝えます。

 逃げ出したかったが、誰の助…

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