藤井聡太が書いた四つの文字 パーフェクトな年、昇竜は蒼天へ駆けた
藤井聡太のいる時代を、将棋界の歴史として刻む。ビッグタイトルの竜王をとり、止まらない勢いを見せつけた2021年9月から12月までの記録。
強いから勝ち、勝つから次の対局が発生する――。対局に追われる過密スケジュールは、将棋界では強者の証しだ。
棋聖・王位を防衛した後、叡王を加え、史上最年少三冠に輝いた藤井聡太(20)は、わずか4日後の2021年9月17日、大阪市福島区の関西将棋会館で八段の斎藤慎太郎(29)との対局に臨んだ。
「西の将棋王子」とも呼ばれる斎藤との対戦成績は、斎藤2連勝の後、藤井4連勝。特筆すべきは、6局中4局の勝者がその後も勝ち進み、タイトル奪取にまで結びつけていることだ(斎藤は初タイトルの王座、藤井は王位、棋聖、叡王)。
本局は、第47期棋王戦の挑戦者決定トーナメント。勝者が8強入りとなる。
振り駒で有利とされる先手番を得た斎藤は、両者得意の「角換わり」の戦型から、新工夫の攻めを披露。対策を練るため藤井が持ち時間を使い始め、斎藤は「手応えを感じた」。序盤で好手を指し、「なんとか、踏みとどまれた」。109手で斎藤勝ち。
藤井との対局は「トップ棋士に自分が対抗できるかどうかの指針」だと斎藤は言う。「藤井さん相手にうまく戦えれば、他の棋士を相手にしても、やれると自信がつくし、藤井さんにはね返されれば、『まだまだ足りない』と思う」。この年度、斎藤はA級順位戦を8勝1敗で駆け抜け、2年連続名人挑戦の偉業を成し遂げた。「(本局で)藤井さんに勝ったことがプラスに働いた可能性はあります」
このとき藤井は竜王戦挑戦と、王将戦の挑戦者決定リーグ戦入りを決定済みで、竜王、王将を加えて五冠になる可能性があったが、棋王戦で敗退し、年度内「六冠」の可能性は消えた。
同世代を輝かせた意外な才能
藤井聡太が初の「ドラフト」で指名したのは、同い年で、デビュー直後の新人だった伊藤匠。彼は時代の寵児として覚醒する。
藤井聡太にはプレーヤーとして、だけでなく監督としての才能もあるらしい。2021年3月27日に放送されたインターネットテレビ局主催の非公式戦「第4回ABEMAトーナメント」のドラフト会議で披露したのは編成の手腕だった。
3人1組の団体戦。14人の…
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