第11回従業員300人うちミリオネア55人 「株主=従業員」は理想郷か?
株主や経営者にばかり富が集まり、働き手の賃金はなかなか上がらない。株主中心の資本主義が抱えるゆがみを和らげるため、株式を社員に持たせて会社の富を分かち合う仕組みが米国でじわりと広がる。億万長者が続々と生まれる世界は、果たして理想郷なのか。
50人ほどの男女が、壁に投影された経営データのスライドを見つめ、経営陣の説明に耳を傾けていた。
米ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外。ホースの製造を手がけるニューエイジ・インダストリーズの本社で昨年10月末、「経営説明会」が開かれた。
男性が手を挙げた。
「昨年と比べて、製造ラインの人員確保は難しくなっていますか」
最高経営責任者(CEO)のケン・ベイカー氏が答える。
「昨年より採用のペースが遅い。生産ラインの忙しさに応じて、別のラインから人を補充することが必要になります」。最後に付け加えた。「質問ありがとうございます」
CEOが謝意を伝えた男性はニューエイジ社の「従業員兼株主」だ。
2019年、同社はすべての株式を従業員が保有する企業に生まれ変わった。経営説明会は四半期に1度、早朝から複数回にわたって開かれ、従業員約300人が参加する。
家族経営から変えた会社のかたち
ベイカー氏によると、この数年で従業員は2倍に、利益も数倍に増えた。前年の決算から算出した株式の価値をもとにすると、従業員のうち55人が、100万ドル(約1億3千万円)相当以上の資産を保有する「ミリオネア」だという。
彼らは、ウォール街のトレー…
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