「君より先に死ぬ」示された選択 引きこもった40歳は机に向かった

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茂木克信
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 小学5年生まではクラスの人気者だった。勉強ができて、足も速かった。

 6年生になり、太り始めた。

 背が低かったこともあり、中学に入るといじめられた。やりたくもない相撲をやらされたりプロレス技をかけられたり。弁当を勝手に食べられ、教科書や運動靴を隠された。

 3年の冬、決意した。「このままではダメだ。自分を変えないと」。20キロ近く減量した。すると一転、高校ではよくモテた。

 自分の努力や忍耐でつかみ取ったポジションに満足感を覚えた。また太るのが怖くなった。高カロリーの食べ物やジュースを断った。多くの制約を自らに課した。

 その反動からかもしれない。関東の私立大学に現役で合格し、一人暮らしを始めると、生活リズムが崩れた。

 1人で過ごす寂しさ。そして、輝いていた高校時代がリセットされ、人間関係を一から作り直すストレス

 大食いを始めた。入学から1カ月ほどで10キロ以上太った。

 大学へ行かなくなった。深夜まで食べては大量の水を飲み、トイレで吐くことを繰り返した。

 東城(とうじょう)健太郎さん(46)=新潟市江南区=の20年以上に及ぶ引きこもり生活が始まった。

自室を出て耳に入った両親の嘆きと愚痴

 1年時の成績が親元に届き…

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この記事を書いた人
茂木克信
新潟総局|行政担当
専門・関心分野
地方自治、くらし経済、依存症、セカンドライフ
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    太田泉生
    (朝日新聞コンテンツ編成本部次長=人権)
    2023年1月21日16時32分 投稿
    【視点】

    この記事には、サクセスストーリーにとどまらない意味があります。 見出しにある通り、転機となったのは、両親が自分たちの死後にどうするかを健太郎さんにはっきり相談したことでした。健太郎さんにとって将来を直視し、自分を変えるきっかけになった

    …続きを読む