将来私たちを支える子どもに財源を 負担増には政府の信頼回復が必要
記者解説 くらし報道部・浜田陽太郎
「異次元の少子化対策」に焦点が当たっているいま、あえて高齢者の社会保障の話から始めたい。
出発点は、都内に住む小西雅昭さん(74)。「介護保険料を払うのは絶対イヤだ」という趣旨の手紙を送ってくれたことがきっかけで10年前に知り合った。その後、小西さんは病気で倒れた。勤め先で入っていた医療保険を使って5カ月入院した。いまは介護保険サービスを使いながらの一人暮らし。少額だが年金も受け取っている。「大言壮語して恥をかいた。反省しています」というのが本人の弁だ。
元気に働けていた小西さんにとって社会保険料の支払いは、単に「自分で使えるお金(可処分所得)が減る」という意味しかなかった。病を得て、高齢になり、あれほど忌み嫌っていた社会保険に支えられている。
子育て支援策の財源に社会保険料を使う案への賛否がかまびすしい。「負担と給付が連動しない」「保険料への上乗せは、現役世代に負担が集中する」といった批判がある。
高齢者にも応分の貢献をしてもらうことは避けられない。一方で、子育て支援のため国民が負担したお金は、現役の「子育て世代」に集中的に還元されることも忘れてはならない。負担と給付はセットで考えたい。その上で、人は永遠に「現役世代」でいるわけではないことを踏まえる必要がある。
いま保険料の大部分を払っている現役期の「私」もいずれ高齢期を迎え、医療・介護・年金のサービスを受ける。そのとき現役期を生きる人数が減っていれば自分の老後はどうなるか。
ポイント
子育て支援で国民が負担したお金は、現役の「子育て世代」に集中的に還元される。いまは現役期の「私」もいずれ高齢期を迎え、社会保障に頼ることになる。政府がお金を集め必要に応じて配るには国民からの信頼が欠かせないが、日本は低い。
今年57歳になる筆者は、現…