試合前練習のノッカー・部づくりに奔走…「野球をやりたい女子」たち

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渡辺翔太郎
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 「試合に出ることはできないけれど、ノックでみんなの緊張をほぐしたい」

 8日開幕の第105回全国高校野球選手権記念鳥取大会(県高校野球連盟、朝日新聞社主催)の2日目第2試合で、鳥取育英(鳥取県北栄町)の女子部員、平葵衣さん(3年)が試合前練習のノッカーを務める。県高校野球連盟によると公式戦で女子選手がノックを打つのは県内初という。

 平さんは元々、マネジャーとして野球部に入った。だがちょうど1年前、ある理由から男子部員と一緒に練習することになった。

 平さんが野球を始めたのは、小学2年のころ。父は地域のスポーツ少年団の野球コーチ、兄はメンバーだった。自宅でキャッチボールする2人を見て、自分も野球をしたくなった。

 中学校では軟式野球部に選手として入った。高校は、女子硬式野球部がある神戸市の強豪校に進んだが、寮生活などになじめず2年生だった昨年6月、鳥取育英に転校。野球部のマネジャーになった。

 だが夏の大会が終わり、3年生が引退すると、男子部員は8人に。翌日から平さんはグラウンドに立ち、練習試合にも出るようになった。

 実際に一緒に練習してみると、男女の体力差はあきらかだった。男子なら一塁でアウトにできる内野ゴロを処理してセーフになることも。でも、チームメートは「一緒にがんばろう」と励ましてくれた。平さんは「マネジャーだと見ているだけ。プレーしていると、ともに喜べるし、勝利を分かち合える。それが楽しい」。

 今春、5人の男子1年生が入部。「自分が出ていると、1年生が経験を積めない」と、練習試合に参加するのは6月中旬を最後と決めた。

 鳥取育英のグラウンドであった「引退試合」には、1番ショートで出場。普段は来ない母親らが見守るなか、「いいところを見せようとしてしまった」。試合は3―2で勝ったが、5打数無安打でエラーも三つ。それでも「みんなが応援してくれて、打席に入るときも緊張しなかった。笑顔を絶やさないことを目標にして、プレーできた」。

 引退後は、マネジャーの仕事をしながら、本番に向けてノックの練習もしている。打ち終えたら、試合中は記録員としてベンチに入ってチームを見守る。「チームのみんなには、野球を楽しんでほしい。たとえエラーをしても、後悔がない試合をしてほしい」と願っている。

 将来は学校の先生か保育士になりたいという平さん。「誰かのために力を発揮できるのが、野球の魅力だし、そういうところが好き。野球の魅力や楽しさを、子どもたちにも伝えていきたい」

JKだって、大会に出たい! 記事後半では、鳥取県に女子の硬式野球部をつくろうとする女子部員たちも紹介します。

女子生徒たちが「女子野球部」づくりに動き出した

 鳥取県内の高校には、硬式の…

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この記事を書いた人
渡辺翔太郎
米子支局長|鳥取県西部担当
専門・関心分野
地域の話題、環境