少子化対策「最後の機会」逃すな 働き方を見直し、世代間対立避けよ
記者解説 くらし報道部・高橋健次郎
岸田文雄首相は今年1月、「異次元の少子化対策」を打ち上げた。6月には「こども未来戦略方針」(戦略方針)を閣議決定した。児童手当の拡充策として、所得制限の撤廃や支給期間の延長などを盛り込んだ。事業費は年3・5兆円規模を見込む。官邸主導のもと半年ほどで中身を固め、かつてない事業費を示したことは看板政策へのこだわりがうかがえる。
戦略方針の中心は、2024年度から3年間で集中的に実施していく「加速化プラン」だ。就労要件を問わず時間単位で保育園などを利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」も新たにつくる。高等教育費の負担軽減や住宅支援、出生時育児休業給付金の引き上げもある。貧困や虐待防止への対応、障害児・医療的ケア児への支援なども含まれる。妊娠、出産から高等教育まで、子育てのさまざまな場面に応じて支えていくという。
幅広い内容となったことについては、政府の有識者会議の委員からは「目配りの利いた方針だ」などと評価する声もあった。
だが、ネットなどでは評判は芳しくない。本格実施を前にした関連施策が批判を浴びている。子ども連れや妊婦らの優先レーン「こどもファスト・トラック」の全国展開や、子育てしやすい社会づくりに携わる「こどもまんなか応援サポーター」のサッカー・Jリーグとの連携などだ。SNS上では「的外れ」「それじゃない」といった声が相次ぐ。
ポイント
政府の「異次元の少子化対策」は、年3・5兆円規模のかつてない事業費を見込む。長時間労働の見直しなど、働きながら子育てしやすい環境づくりがカギとなる。財源確保のため高齢者向け社会保障費を過度に減らせば、世代間対立を招きかねない。
朝日新聞が7月に実施した全…