内田有紀さん「40代の今が一番」 キャンプにハマって向き合えた
今年に入って久しぶりに髪をショートカットにした内田有紀さん。20代の頃と変わらぬ印象を受けますが、丁寧に紡がれた言葉の端々から、同世代と同じように悩み、仕事や人と向き合ってきた真摯(しんし)な姿勢が伝わってきます。年齢を重ねた先にあった「40代の今が一番いい」と語る、内田さんのポジティブエイジングとは。
「人生100年時代」が近づく中、50歳はちょうど中間地点です。変わるカラダ、働き方、家族との関係……。朝日新聞と、宝島社の女性誌「GLOW」の共同プロジェクト「Aging Gracefully」(エイジング グレイスフリー)は、家庭や職場、地域で大事な役割を担うミドルエイジの女性たちの「いま」と「これから」を見つめ、自分らしく年齢を重ねていくことを応援します。
「30代くらいまでは『めざすべき理想の姿』があって、そこに自分を当てはめていたように思います」と話す内田さん。デビュー直後の10代から数々の映画やドラマに出演し、周囲の期待に応えようと懸命に走り続けてきたそうです。
「人って誰しも、仕事の場面では『できる人に見られたい』という気持ちがあると思うんです。少なくとも私自身はそうでした。監督の意図がわからなくても、『内田さんならできるよね』という空気が漂うと『わかりません』とは言えなくて……。すぐ横でマネジャーが『今のわかってないよね』という顔をしていて、『ああ結局、お見通しなんだな。こんな自分は手放したいな』と思うようになったんです」
内田さんのような思いを抱く女性はきっと少なくないはず。若い頃は自分を少し大きく見せ、年齢を重ねると今度は「大人だから」と、社会的な枠組みの中に自身を当てはめてしまうことも。
「大人だからこうしなきゃ、ってありますよね。私の場合『大人の女優として、こうあるべきだ』とか。『じゃあその女優らしさって何?』と、一人で悩むこともあるんです。そんなときに、雑誌やウェブの記事を読んで、誰かが発信している言葉に勇気づけられることも。そこは読者のみなさんと本当に同じで、同じように悩みながら年齢を重ねているんです」
悩みながら年齢を重ねる中で、自身の身体や心の変化に向き合ってきたという内田さん。更年期が視野に入り始める40代は、女性ホルモンの影響も見逃すことはできません。
「本格的な更年期は少し先のことですが、ときどき『体温の変化』に戸惑うことがあるんです。撮影中に突然汗がわっと流れてきて、衣装は大丈夫かなと心配になることも。幸いにも、今はこういう『女性特有の変化』に関する情報があふれていますから、自然な流れの一つなんだなと受けとめています。個人的に共感するのは、ご自身の更年期の経験をオープンに話される女優さんが増えたこと。いち女性として勇気づけられますし、私自身もそうでありたい。今は先輩方に体験談を聞きながら、体調とうまく付き合っていく準備をしている感じです」
テント購入のために泊まり込みで
自分自身にも何かを伝える相手にも常に正直でありたいという思いから、今回のようなインタビューの際に「少々盛って話すことをやめたんです」と笑う内田さん。
「『私は理想的な生活をしています!』とか言っても、そんな日ばかりじゃないですから(笑)。反対に、20代の頃はできなかった『弱い部分』を思い切って表に出してみたときに、受け止めてくださる方がいることもわかったんですね。大人になっていろいろな経験をすると、相手の感じている弱い部分にも共感できる。これは年齢を重ねたからこそ得られる『成熟』や『深み』みたいなもので、だから40代の今が一番、身体も心も調子よく過ごせています」
「こうあるべき」を手放して、ありのままの自分を受け入れるきっかけをたずねてみると、「キャンプにハマったことかな」という、意外な答えが返ってきました。
「ポップアップテントをいただいたことがあって、休みの日に海辺で開いてみたんです。中に入って『この空間なら、人目を気にせず台本が読めるんじゃない?』って。実際やってみたらセリフ覚えがよくて『これいいね!』となった(笑)。そのあたりから、仕事とプライベートが融合し始めた感じですね。都会では閉鎖的な空間で根を詰めがちですけど、自然の中にいると集中力が高まるんです」
最初は台本の読み合わせが目的だったものの、今ではキャンプそのものに魅せられてしまったという内田さん。レアもののテントを購入するために泊まり込みでわざわざ長野に出かけ、一般の方と一緒に一晩野宿で並んだというから驚きます。
「周囲には正直、軽く引かれています(笑)。でもね、川のせせらぎとか波の音に触れることって、『人が根源的に欲していること』だと思うんです。あと、キャンプのいい点は『ちょこちょこ思い通りにはいかないこと』なんですよ。ご飯を作っていたら突然雷雨に襲われて、でも炭火はすぐには消えないから、ずぶぬれで対応するとか。自然の中では人間って本当にちっぽけな存在だなって、生きていく上でのタフさみたいなものが身につくんです」
生きていれば、うまくいかない日があって当たり前。自然の中で身をもってそんな経験を重ねたことで、仕事にも人生にも、肩の力を抜いて向き合えるようになったといいます。
「仕事とプライベートを、きっちり線引きしなくなったことも大きいですね。テントの中で台本を覚えるように、『生活の中に仕事がある』から、仕事も人生の一部として楽しめるようになった。実は車の中にキャンプ道具一式を積んであって、撮影後に『じゃあキャンプ行ってきます!』ということも。ドラマの『フィクサー』で共演している唐沢寿明さんからは、『次のドラマで共演するまでキャンプしてろ』ってからかわれています(笑)。でも、こんな風に自然に触れさせてもらっていることが、今の私を健やかに保てているのだと思います」
内田有紀さんプロフィール
1975年11月16日生まれ。東京都出身。92年、ドラマ「その時、ハートは盗まれた」で俳優デビュー。93年にユニチカ水着キャンペーンガールに選出され、その後テレビ、映画、舞台へと活躍の場を広げる。WOWOW「連続ドラマW フィクサー」Season3に、沢村玲子役で出演。ロート製薬のスキンケアブランド「BLOOMIO」のイメージキャラクターとしても活躍中。
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