第2回中野翠にショックを与えた、ねじ式、アンアン、そして林真理子

有料記事中野翠 好き嫌いを書いてきた

聞き手・野波健祐
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 高校時代に頭の中が左翼になってたせいか、世の中を動かしてるのはマルクスが言うところの経済システムだと思っていて。でも、次第に間違ったところに入っちゃったかなと……。

 《1965年、早稲田大政治経済学部に入学。同年暮れから授業料値上げなどを巡り、学生たちの大学闘争が激化する》

 入学してすぐ社研(社会科学研究会)という左翼学生の巣窟のようなサークルに入って読書会に参加してた。そのうち学内が活況を呈していって、年明けに各学部がストライキに突入。最初は「来た~」とばかりに興奮して、頭の中で革命歌の「インターナショナル」が鳴り響いてたんだけど、バリケード封鎖なんて状態になると、女子の出番はないなと。学内に泊まり込みなんてできなかったから。

 《社研は部室を文研(文学研究会)と共有していた。文研メンバーの中には後に評論家となる呉智英さんもいた》

 社研の仲間はストレートに真面目な人が多かったのだけど、文研はひとすじ縄ではいかない曲者ぞろい。ゴチエー先生もそうだった。聞いたこともない小説や映画の名前をあげては、自分のセンスを競い合うような話をしてた。今でいうマウンティング。女子校育ちだったから、男の子って面白いなぁと思って眺めてた。

 だんだん文研の連中と話すことが楽しくなっちゃって、次第に気づくのね。私は思想とか論理よりも、感覚の方がだんぜん強い人間だなって。基本は好き嫌いで判断するんだって。

コラムニストの中野翠さんが半生を振り返る連載「好き嫌いを書いてきた」。全4回の2回目です。

 《大学4年のとき、二つのカルチャーショックを体験する》

 一つは夢野久作の小説「ドグ…

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