それぞれの最終楽章・離婚した両親をみとって(4)
フリーライター・堀香織さん
「のど仏だけでも持って帰ろうかな」
私がそう言った途端、弟が血相を変えて「ねえちゃん、それ、どこ置くの?」と聞いてきた。
「え、まだわかんないけど……。お母さんの仏壇の隣じゃまずい?」
「そりゃまずいでしょ。離婚した40年後に隣にお父さん来たら、お母さん、嫌がると思うよ」。弟はそう言って苦笑いを浮かべた。
父の通夜の日のことだ。父が長年暮らした金沢市内の葬儀所で私と弟、父方のいとこ2人が並んで棺(ひつぎ)を囲んでいると、少し離れたところにいた住職が「お墓はどうするの?」と声をかけてきた。両親が離婚し、私たち3人の子どもは母のもとで育ったことを知って、心配してくれたのだろう。
「市内の卯辰山に祖父母のお…
- 【視点】
堀さんが父親を見送る過程で経験したこと、考えたこと、抱いた思いなどを読み、共感したり、ホッとしたり、うなずいたりしてしまった。細かい説明は省かせていただくが、私自身、中学生のときに父親と離別し、その10年後に母親が他界。母が亡くなったとき、
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