第11回技術誇った日本、現実逃避の危うさ 再生へ国家構想を 寺島実郎さん
2024年は歴史の中でどんな年になるのでしょう。経済人、大学人などさまざまな立場で戦後の世界を歩んできた寺島実郎さんは、「明治以来の日本にとって、これから22世紀までの77年間が重要だ」と訴えています。世界史的な観点から、この国の抱える問題点と、今後求められる構想について聞きました。
――2024年は歴史の中でどう位置づけられるでしょうか。
「この国が置かれている状況を歴史の時間の中で考えてみましょう。明治維新から1945年の終戦までは77年でした。これは終戦から現在までとほぼ同じ長さです。そして77年後は22世紀最初の年です。これからの77年を『未来圏』の21世紀と捉えた国家構想が、いま求められていると思います」
「経済を考えると、日本の国内総生産(GDP)が世界に占める比率は、明治が始まった頃と敗戦から5年後が、ともに3%程度でした。敗戦を『物量で負けた』と認識し、鉄鋼、電機、自動車などの輸出産業を育てた日本は、94年には世界のGDPの18%を占めました。しかし、それをピークに低迷し、30年後の今年は、3%台にまで落ち込むとみられています」
――明治初頭、敗戦後と同じレベルになりつつあるのですね。
「そうです。94年には日本を除くアジアのGDPの合計は世界のわずか5%でしたが、いまは25%を超え、日本の6倍以上です。日本は1人あたりGDPでもアジアで5位、世界で34位です。この現実を、どれだけの人が正視しているでしょうか」
「松下幸之助が唱えた『PHP(繁栄を通じて平和と幸福を)』に象徴されるように、何よりも豊かさを追求したのが戦後日本でした。世界2位の経済大国という自尊心が、2010年にGDPで中国に抜かれたことで砕かれ、このことが日本人の精神に及ぼした影響は計りしれません
「政権奪還のため、安倍晋三氏が掲げた『日本を、取り戻す』というキャッチフレーズは複雑な意味を持つものでしたが、中国に抜かれたショックが通奏低音として響いているように見えました。昨年、日本のGDPはさらにドイツにも抜かれ、26年にはインドに抜かれると予測されています。今こそ日本のポテンシャルが試される時ですが、この国の現状を直視して、危ういものを感じています」
――危うさ、ですか。
「現実に正対して技術を磨き…