第2回信念と現実のはざま、苦闘にじむ宮沢日録 政治家動静を見つめる意味
政治部長・松田京平
政治部長・松田京平
宮沢喜一元首相の政治行動記録(日録)が見つかった。40年間にわたる詳細な内容で、歴史的価値も高い。政治部長がその意味を解説する。
政治家の動静を確認することは、権力監視の基本だ。宮沢氏のように、首相、閣僚として長く政権中枢にいた人物の行動記録は、戦後80年を控えた日本の政治史の断面を浮かび上がらせ、自民党派閥の裏金事件で問われる政治改革を考察することにもつながる。
日録には宮沢氏の直筆によるメモや補足のような走り書きがあり、本音や衝撃が垣間見える。後年振り返って書く回顧録と違う臨場感がある。
吉田茂、池田勇人、佐藤栄作という歴代首相に仕え、戦後日本を牽引(けんいん)した政治人生の前半。後半は首相として、自衛隊の海外派遣など国際貢献を問われ、蔵相時代に始まったバブル経済の後始末、行き詰まりをみせた自民党政治の立て直しに追われた。政敵さえも認めた知性と教養、キャリアを持ちながら、保守本流、護憲派の信念と現実政治をどう取り結ぶかに苦闘した日々を日録は飾ることなく粛々と記している。
宮沢氏へ 高校時代の文通
日録の記録は精緻(せいち)…