石川の観光誘客、隣の福井が担う 新幹線延伸前に東京でPRイベント
北陸新幹線の金沢―敦賀延伸が3月16日に迫る中、福井県が石川県の観光PRに一役買っている。石川が能登半島地震の対応に専念できるよう、PR作業の一部を福井が引き受け、北陸全体をもり立てる試みだ。
東京都世田谷区の複合商業施設にある「二子玉川 蔦屋家電」で24日、両県の見どころをアピールするイベント「越前加賀に出会う旅展」が2日間の日程で始まった。華やかな色使いが特徴の石川の「九谷焼」や、日本六古窯の一つに数えられる福井の「越前焼」のぐい飲みで地酒を試飲したり、銘菓を試食したりする人らでにぎわっていた。
イベント会場では八つの地酒と五つの銘菓も販売。観光客が実際に撮った「インスタ映え」するスポットの写真も展示し、魅力を体感できるようにした。
主催したのは、両県と、福井の5市町(大野、勝山、あわら、坂井、永平寺)、石川の3市(白山、小松、加賀)など41団体でつくる協議会だ。延伸によって小松、加賀温泉、芦原温泉の新駅ができることから、このエリアで連携して観光をPRしようと2010年に発足した。
ただ、この日はイベント会場に石川県の自治体職員の姿はなかった。二つの新駅が誕生する石川にとっても延伸は大きな節目だが、職員らは地震対応に力を注いでいる。イベント会場に客を呼び込んだり、接客したりしているのは主に福井の職員だ。
地震では福井県あわら市でも震度5強の揺れを観測し、温泉旅館などが被害を受けた。ただ、1月4日には災害対策本部を廃止して支援本部を設置。石川の支援に本格的に乗り出し、被災地に福井県職員を派遣したり、2次避難者を受け入れたりしている。
今月10日には杉本達治・福井県知事が、馳浩・石川県知事との面談で、災害廃棄物を一部受け入れる意向を表明。同時に伝えたのが、新幹線延伸を積極的に発信することだった。杉本知事は「福井が一生懸命PRすることで石川にも来ていただき、能登全体に元気が広がるようにしたい」と述べた。開催が危ぶまれた今回のイベントも、福井が石川分の仕事を引き受けることで開催にこぎ着けたという。
福井県はふるさと納税のサイト上で、石川、富山両県にもふるさと納税を通じた支援を、とサイト利用者に呼び掛けている。また、今月中旬からは東京・銀座にある福井のアンテナショップ「ふくい食の國291」で、人気菓子やみそなど石川県のソウルフードを販売している。
家族3人でイベント会場に来た都内の30代男性は、日本酒を試飲。菓子を試食した30代の妻とともに「ぜひ福井に行きたい」と声を弾ませた。
横浜市から家族3人で来た50代女性は「石川県」の文字が目にとまり、会場に立ち寄った。これまで義援金を5回寄付しているといい、「少しでも復興のお役に立てば」といって菓子を複数買い求めていた。
3月下旬にはJR新宿駅西口広場で、両県自慢の特産物を販売するイベントも開く。ここでも福井が両県分のPRを担う。福井県新幹線開業課の担当者は「(石川の)3市は復旧業務が立て込んでいて来られないので、代わりにPRして元気を引っ張っていきたい」と話している。
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- 【視点】
「北陸3県が沿線でつながり、互いに競合ではなく、延泊を呼びかけ合う仲間になれる」 「東京だけじゃない。陸の孤島どうし、北関東と北陸がつながる交流の変化は本当に大きい」 北陸新幹線延伸がもたらすインパクトの大きさをこう教えてくださった
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