ドラマでしか語れぬファンタジー 相反を結ぶ宮藤官九郎の世界の魅力

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聞き手・加藤勇介
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 宮藤官九郎さん脚本のドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS系、金曜夜10時)が話題を集めている。登場人物たちがタイムスリップをする中で、令和の過剰なまでのコンプライアンスに疑義を呈する描写に昭和世代が喝采を送れば、昭和のところかまわぬ喫煙や当たり前のようにセクハラパワハラ的な言動をする描写に令和世代が眉をひそめる。賛否両論の中でドラマは何を描いているのか。テレビドラマや演劇を研究する早稲田大の岡室美奈子教授に聞いた。

唐突なミュージカルがもたらす「公平な視線」

 宮藤さんのドラマは、相反する二つを結ぶものが多いです。仏教系男子校教師の主人公とキリスト教系女子校教師のヒロインを中心に両校の合同文化祭を描いた「ごめんね青春!」(2014年・TBS系)などがありますが、11年の東日本大震災以降は生と死を結ぶものが多くなりました。

 特に、死者と共に生きるというのが様々な形で描かれています。震災から間もない頃に放送された「11人もいる!」(11年・テレ朝系)では、亡くなっているお母さんが幽霊となって現れます。私が大傑作と思う「俺の家の話」(21年・TBS系)は、父親が亡くなるのかと思いきや最終回で主人公自身が亡くなり、幽霊となって父と対話しました。

 「不適切にもほどがある!」も、当初は昭和と令和の相反する価値観の中で騒動が起きるという笑える部分に注目が集まりましたが、中盤から主人公と娘は阪神大震災に遭っていて、死者が現代によみがえっている構図が明示されました。ドラマでしか語れないファンタジーを私たちはもう既に見ています。

 宮藤さんのドラマは最終回に…

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