約束した今国会中の法改正に道筋はつけたが、最大の後見役との関係は大きく傷ついた。党内議論の積み重ねを飛び越えた判断には不満が渦巻く。岸田文雄首相による公明党案の丸のみは、ただでさえ脆弱(ぜいじゃく)な党内基盤をさらに融解させる。
首相自身による最終決着に、党内には首相への不満が広がる。ある党幹部は「定見のないリーダーが自分だけいい格好をしようとして、これまでの積み上げを全部ぶっ壊した」とこき下ろした。比例区選出の参院中堅はため息をついた。「5万円、10万円ごときで総理が出るなんて情けない。幹事長が決めるべきこと。『総理が出てこないと何も決められない』とみられるだけだ」
あるベテラン議員は「法案採決の時に自民から造反が出るんじゃないか」。個々の議員にとってパーティー収入は命綱だ。「これまで買ってくれた企業の経営者が5万円しか買わなくなる。年間数百万円の減収だ」。懐事情を考えれば岸田派幹部も同じだ。派閥幹部は首相の判断を「やりすぎだ」と突き放した。
今回の決断は首相の足元をさらに掘り崩すことになりそうだ。
ちゃぶ台返し、求心力失う首相
6月実施の定額減税、裏金事件を受けた派閥解散宣言、衆院政治倫理審査会への自らの出席……。あいまいな指示をして部下に任せるが、うまくいかず締め切りが迫って追い込まれると首相自らが表に出て苦境を打開しようとする手法が続いてきた。
直後は驚きとともに目下の問…
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