飲酒運転で逆転無罪、でも戻らない免許 「ミス認めるのが当然では」

有料記事

中山直樹
[PR]

 4年前の1月の深夜。福岡市に住む男性(43)は知人から呼び出され、スナックで酒を飲んでいた。その前にも別の居酒屋でかなりの量を飲んでおり、その日に何をどれくらい飲んだのか、よく覚えていない。

 その後、自宅に帰るため、知人から紹介された「地元の後輩」が運転する自分の車に乗り込んだ。酔いが回っていた男性は、ほどなく後部座席で眠り込んだ。

 目を覚ましたとき、車は前のバンパーが大破する単独事故を起こしていた。運転していた後輩は「レッカー車を呼んできます」と言って、車を離れた。

 保険の書類を探さないと――。酔ったまま運転席の回りをあさっていると、到着した警察官が窓をたたいてきた。「呼気、調べさせて」

 自分は運転していないし、呼気検査を受ける義務もない。言い争いになり、酔った勢いでつばを吐きかけた。公務執行妨害容疑で現行犯逮捕。運転していた後輩が戻ってくることはなかった。

 1カ月半後、すでに釈放され、勤め先の建設会社に出勤しようとしていた男性のもとを警察官が訪ねてきた。今度は道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで逮捕された。

 「おかしい。自分は運転していない」。取り調べ中に何度もそう説明した。しかし、当時の記憶はおぼろげで、運転していた後輩の素性もよく覚えていない。警察官は聞く耳を持ってくれなかった。

 福岡地裁で裁判が始まってからも否認を続けたが、2020年12月、男性は酒気帯び運転と公務執行妨害の罪で懲役10カ月執行猶予4年の有罪判決を受けた。その2カ月前には、県公安委員会から運転免許の取り消し処分も受けていた。運転していた後輩を探そうとしたが、関係者への接触をしないことを条件に保釈されており、できなかった。

防犯カメラ、証言を精査すると…

 だが、控訴審福岡高裁の判断は違った。

 男性の主張をもとに、防犯カ…

この記事は有料記事です。残り1666文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
中山直樹
ネットワーク報道本部|都庁担当
専門・関心分野
人権問題、災害、人口減