過疎地に足りない「子どもの居場所」 23歳起業家が挑んだ拠点作り

有料記事

相江智也
[PR]

 学校や家にいるのが「ちょっとしんどい」時に立ち寄る場を、過疎地の子どもたちにも――。

 徳島県南部にある人口約3700人の町、牟岐町で「居場所」作りの活動を続ける団体がある。

 旧牟岐小学校の校舎の一室で毎週木曜日に開かれる「フリースペース われもこう」。学校に行きづらい小中高生たちが、教員経験者や教員志望の大学生と一緒に自分のペースで学び、おしゃべりをする場だ。

 ある日、テーブルに広げた算数のプリントに向かう女の子には、ジャージー姿の男性が解き方のヒントを出していた。隣では別の子が漢字ドリルを解いている。現在の登録者は約20人。

 運営する一般社団法人「うみのこてらす」の川辺笑代表(23)は「ここで過ごして、再び学校に行くようになる子もいる。しんどい時に居場所があることが大事」と話す。

 学校に行きづらい子どもは増加傾向にある。

 県教育委員会の調べでは、県内の公立小学校で2022年度中に30日以上欠席した児童のうち、病気や経済的理由以外の「不登校」とされたのは475人。10年前の5倍以上に増えた。公立中学校でも1065人と10年前の2倍近くになった。

 一方、不登校の児童生徒にカウンセリングや学習指導をする「教育支援センター」があるのは県内全24市町村のうち、徳島、鳴門両市など17市町。市町村や県の窓口と連携するフリースクールなどの民間団体も13団体にとどまっている。

 都市と地方の教育格差の一つに、学校に行きづらい子どもへのサポート体制を挙げる川辺さん。大学時代に「居場所」作りを始めた川辺さんは今、めざす支援策を実現するため、クラウドファンディングにも挑戦しています。

 川辺さんは「車で1時間かけ…

この記事は有料記事です。残り1241文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2024年5月31日10時0分 投稿
    【視点】

    文部科学省が昨年10月に公開した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によれば、不登校児童の中で学校内外で相談・支援を受けていない割合は約4割で、11万人以上に及ぶ。また、同省が2021年10月に公開した「不登校

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年5月31日16時18分 投稿
    【視点】

    生きる意味を見失いかけている子供からのSOSを受け取り、彼、彼女たちのための居場所を作った川辺笑氏の行動力には頭が下がる思いだ。心より敬意を表する。 と同時に、憤りも感じる。というのも、本来ならばこうした取り組みは、学校教育のあり方を見つ

    …続きを読む