脱炭素に貢献期待の「高温ガス炉」 安全性と普及への死角
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府が開発に力を注ぐ「次世代革新炉」。その一つ、高温ガス炉は脱炭素で重要になる水素を作り出せると期待される。日本原子力研究開発機構は、今年度中にも国内唯一の試験研究炉「HTTR」(茨城県大洗町)への、水素製造施設の増設を原子力規制委員会に申請する。
従来原発より高温の熱、期待される水素製造
4月末、HTTRの原子炉格納容器の中に入ると、ヘリウムガスが流れる銀色の配管や大型の設備が所狭しと並んでいた。
通常の原発(軽水炉)が水で原子炉を冷やすのに対して、高温ガス炉はヘリウムガスで冷やす。軽水炉より高温の熱を取り出せる。発電に加え、地域暖房など幅広い目的で活用できるといい、特に期待されるのが水素製造だ。
水素は貯蔵や輸送が可能で、電気や熱を取り出すときに二酸化炭素(CO2)が出ない。高温の熱を使えば、大量の水素を安定的に製造できると期待されている。
今回、原子力機構は、メタンを水蒸気と反応させて水素を作る製造施設を増設する方針だ。ただ、この方法はCO2が出てしまうため、ヨウ素と硫黄の化学反応で水素を作る方法も研究している。
原子力機構の坂場成昭・高温ガス炉プロジェクト推進室長は「世界的な競争になっているので、とにかくスピードをあげたい」と強調。政府は、30年代後半に経済性を検証する「実証炉」の運転を開始するとしている。「高温ガス炉と水素製造施設の接続技術を確立して、実証炉にいかしたい」と語る。
記事の後半では、高温ガス炉の高い安全性の理由や海外の開発状況のほか、実用化に向けた課題を紹介します。
■先行する中国、欧米も開発に…