第1回M&A仲介で事業承継、老舗の寝具店は4カ月半で資金が尽きた

M&A仲介の罠Ⅱ

 理想とかけ離れた実態が続々と浮かぶ中小企業のM&A仲介。今回は経営者保証が引き継がれないトラブルを検証し、経営者たちが身を守るすべを考えます。

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 秋田市で老舗の寝具店を営む女性社長(58)は、母と弟、娘を連れて指定された会議室で待っていた。2023年4月3日午後。曽祖父から受け継ぐ家業を、M&A仲介を通じて譲渡する契約の場。すこし遅れてやってきた契約相手の男性は、この日が2回目の対面だった。

 その場を仕切ったのは、会社の税務顧問も務める市内の税理士法人。書類に次々と判を押し、譲渡額の22万円が振り込まれたのを預金通帳で確認した。

 契約相手は那須高原のチーズケーキを土産に残し、「これからしてほしいことはメールで送る」と予告して去っていった。

 「Confidential(コンフィデンシャル)」と書かれた1通の指示文書が届くのは、契約から1カ月が過ぎた頃だった。

「中東にふとんを輸出する」

 明治38(1905)年に綿…

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この記事を書いた人
藤田知也
経済部
専門・関心分野
経済、事件、調査報道など