「石の上にも三年」は今④
退職代行サービスの活況が話題になるなど、「辞める若者たち」が注目されています。こらえ性がない、売り手市場だからできること――などと指摘されることも。20代で6回転職して30歳でフリーライター・作家に転じた、ひらいめぐみさんは、「極めるべきは職業ではなく自分自身」と言います。その職業観を聞きました。
どんな仕事も3年続ければ道が開け、成功にもつながる――。日本で長く流布してきた「石の上にも三年」、社会や働き方が変わる中でどう考えてゆけばいいのでしょうか。インタビューシリーズでお届けします。
――20代で6回の転職を経験したそうですね。学生時代はいかがでしたか。
就職活動はしませんでした。大学3年生から、大好きだったメロンパンのイベントを年1回開催していました。その収益は、紛争に苦しむコンゴ民主共和国の支援にあてていました。就職したら、仕事とイベントとどっちつかずになってしまうと心配になり、卒業してからもコンビニなどのバイト生活でした。
一人暮らしで、生活できるギリギリの稼ぎでしたね。友達とのランチ代を惜しく感じたり、ご飯のにおいだけで食事をしのぐ日もあったりしました。そんなときに大腸から出血しました。検査だけでお金がポーンとなくなってしまった。イレギュラーの事態で、金銭面で不安になりました。
コンゴを救うどころじゃない。まずは自分の生活をなんとかしないと誰かを助けることなんてできないと気づきました。安定した収入の得られる正社員をめざして、転職エージェントに登録しました。
――初めての就職活動でしょうか。
本当にそうでした。新卒枠じゃなくて、中途採用を扱うエージェントから会社を紹介してもらいました。なかなか採用されずに、こてんぱんにされました。そのなかで一つだけ、大手人材会社に受かりました。これで大きな病気になっても医療費が払える、という安心感はありました。
苦手だったハイタッチ
――初めての正社員生活はいかがでしたか。
バイトのときよりもたくさんのお金をもらって、最初はうれしくて、これまで買えなかった家具とか買ったんですけど、喜びは最初の1カ月だけでしたね。給料に見合う仕事がいきなりできるわけではないので、罪悪感の方が大きくなってきました。
営業経験があって、すぐに結…
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