なぜ無実訴えるほど長期拘束 元裁判官が訴える「人質司法」の違憲性

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聞き手 編集委員・豊秀一
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 東京五輪パラリンピックをめぐり、大会組織委員会の元理事に対する贈賄罪で逮捕・起訴された出版大手「KADOKAWA」の角川歴彦(つぐひこ)元会長が、「人質司法は憲法違反」とする国家賠償請求訴訟を起こしました。冤罪(えんざい)の温床ともされてきた人質司法の問題をどう考えるべきか。角川人質司法違憲訴訟とともに大阪のプレサンスコーポレーション元社長冤罪事件の弁護団の一人で、元裁判官の西愛礼(よしゆき)弁護士に話を聞きました。

         ◇

 ――そもそも「人質司法」とは何なのでしょうか。

 「無実を主張したり、黙秘権を行使したりすればするほど、身体拘束が長引く日本の刑事司法実務の運用のことをいいます。身体拘束を受ける人にとって、身体を人質に取られて自白を強要されているような状況になることから『人質司法』といわれています」

無罪主張する人ほど長期拘束

 ――「人質司法」の具体的な弊害を教えてください。

 「まず、身体拘束が長期化して、肉体的・精神的・社会的・経済的に大きな不利益をこうむります。その結果、無罪を主張することに萎縮したり、身体拘束を受けることで打ち合わせなどを十分に行うことができず、無罪主張が十分に行えなくなる結果、冤罪が生まれてしまうおそれがあります。裁判で無罪を主張することは当然の権利であるにもかかわらず、無罪主張をする人ほど不利益を被ることになっており、これは裁判を受ける権利の侵害だと思います」

 ――西さんは元刑事裁判官でした。元裁判官という立場から、「人質司法」を成立させている背景に何があるとお考えでしょうか。

 「問題は多層的です。以下の…

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    越智萌
    (立命館大学国際関係研究科准教授)
    2024年7月9日8時59分 投稿
    【解説】

    カルロス・ゴーン氏の弁護人を務めた高野隆氏によれば「「人質司法」という表現は、主として、この国で刑事弁護を生業(なりわい)としている弁護士が使っています。誰が考えたというわけではなく、私自身も弁護士になって刑事弁護をやりはじめてすぐにこの言

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