テレビシリーズ終了から19年たって公開された劇場版「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」には及びませんが、26日から公開中の「劇場版モノノ怪 唐傘」もテレビシリーズ終了から17年。密度の濃さと華やかさを増したビジュアルと主人公「薬売り」のミステリアスでカリスマ的な存在感が光ります。スクリーン映え満点、声優陣も充実。でも「ちょっと長編映画にはなりきれてないな」と感じました。映像面でもドラマ面でももっと山と谷が欲しいのです。テレビの30分×3話とかだったら申し分ないのですが。
怪異を引き起こし人を襲う「モノノ怪」。それを斬って祓(はら)う「退魔の剣」を携えた薬売り(声・神谷浩史)が今回ふらりと現れたのは、天子様の世継ぎを産むため各地から美女が集められた大奥。その「女の園」に新米女中として若いアサ(声・黒沢ともよ)とカメ(声・悠木碧)がやって来るところから物語は始まります。寵愛(ちょうあい)されるフキ(声・日笠陽子)が天子様の子を産んだものの、本来出産前に行う大事な「大餅曳(おおもちひき)」の儀式がなぜか中止され、御祐筆(ごゆうひつ)の北川(声・花澤香菜)は行方不明らしく、大奥には不穏な空気が充満。そこへじわじわと不気味な怪異が……。
大奥の中は鮮やかな色と細かな模様で四方八方埋め尽くされ、万華鏡か千代紙のよう(和紙のテクスチャーをかぶせているのが利いてます)。閉鎖的で抑圧的、どこかいびつで常にぴりぴりギスギス。トップの御年寄(おとしより)を務める歌山(声・小山茉美)のドスのきいたすごみがこの空気にマッチします。井戸の水が御水様(おみずさま)として信仰され、みなその生臭い水を飲むというのも淫靡(いんび)なカルトっぽい。舞台は上々です。
通過儀礼的な試練を機に仲良…