歴史的快挙　92年ぶりのメダルの瞬間

　歴戦の名馬、MGHグラフトンストリートが最後の障害を越えた。ミスはゼロ。ライダーの大岩義明（48）は見守るチームに向かってこぶしを突き上げた。ゴールすると仲間に「メダルだよ！」と声をかけられ、馬上で泣き崩れた。

　パリ五輪の大会4日目、総合馬術団体で日本代表の「初老ジャパン」が銅メダルを獲得した瞬間だった。馬術では1932年ロサンゼルス大会で西竹一（たけいち）が金メダルを獲得して以来92年ぶり、総合馬術としては初の快挙だった。

初老ジャパン　人生賭け勝負の日へ

　「メダル取った時、チームの愛称がなきゃね。全員昭和生まれだから『昭和ジャパン』か『初老ジャパン』ってどう？」「初老はちょっとネガティブか？　でも話題になれば面白いよね」

　パリ五輪に向けた英国での合宿中、根岸淳監督らと全員で話し合いチームの呼び名を決めた。

　万全の準備で迎えた五輪本番、雨の中行われた初日の馬場馬術で日本は5位につけていた。2日目のクロスカントリーが勝負の日だった。ぬかるんだ地面に脚を取られてタイムオーバーによる減点はあったものの、北島隆三（38）のセカティンカは失敗なく安定した走りを見せ、大岩にタスキをつないだ。

　障害をまっすぐ見つめ、覚悟を決めた。

　「自分の人生をかけた勝負。失敗できない」。手綱に力が入った。東京五輪ではつまずいた障害を含め、ハイペースで難所を越えていった。危うい場面もあったが減点0でアンカーの戸本一真（41）につないだ。

　「馬よりも気持ちが前に出ていましたね。すごいペースだった。大岩さんらしい泥臭い走り。でも結果が全てですからね」と話す戸本。8年来の相棒ヴィンシーと、盤石の走りでタイム内にゴール。2人連続で減点0に抑え、この時点で3位に躍り出た。

　このままいけば、メダルがある。

　期待が膨らむ一方で、好成績を支えてきた馬たちの脚にも限界が迫っていた。

■全員昭和生まれ　本場欧州で…