3兄弟でみとった父 金メダル手にした体操・杉野正尭が伝えたい言葉

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内田快
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 「俺、実はプリン嫌いやねん」

 9年前の冬を思い出すと、なぜだろう、父の言葉が頭に浮かぶ。

 福井・鯖江高2年だった杉野正尭(たかあき)(25)に、父・忠さんが緊急入院したという連絡があった。鹿屋体育大にいた史尭(ふみあき)さん(29)も、慶応大に通っていた広尭(ひろたか)さん(27)も。全国に散っていた3兄弟が、三重に帰ってきた。

 病床の父が食べやすいと思い、買ってきたプリン。これまでも家では食べていた。苦手なことを知って驚いた。

 昼間は3兄弟でベッドを囲んだ。夕方からは母・祥子さん(59)が付き添った。

 そんな日が数日経つと会話が難しくなり、1週間ほどで50歳の父は逝った。

 最期の日、父の肺に酸素を送るポンプを手で押した。交代で、と話していたが、正尭がずっと押し続けた。

 「お父さん、お父さん」

 必死で声をかけると心拍数が少しだけ戻った。何度も呼び続けた。

 小1で兄2人と同じ体操教室に通い始めた。父は体操未経験。でも、体育館に3人を迎えに来ると、自分もトランポリンを跳んでいた。宙返りまでできるようになった。子どものやっていることを理解したかったのだろうか、と思う。

 正尭が小学校低学年だったとき、父の大腸がんがわかった。

 3兄弟は中学校卒業後に全員…

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内田快
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テニス、スポーツと社会