さよなら「シアターねこ」 愛媛で演劇文化育成に孤軍奮闘、力尽きる

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戸田拓
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 松山城下で12年にわたって愛媛の舞台芸術文化を支えてきた小劇場「シアターねこ」(松山市緑町1丁目、98席)が、8月31日の公演を最後に閉館する。運営する合同会社シアターねこ代表で唯一の社員、鈴木美恵子さん(76)は、無給で劇場を支えた日々を、「地域に演劇を根付かせるにはいたらなかった」と振り返った。

 鈴木さんは広島市の出身。幼い日のままごと遊びを通じて演じる楽しさを覚え、若い頃に出会ったピーター・ブルック演出の「夏の夜の夢」、木下順二脚本の「夕鶴」などの舞台に魅了された。自らも劇団をつくって演劇の世界に関わった。

 1980年に松山市に引っ越した。公立高校の演劇大会参加禁止など、愛媛の演劇文化の未熟さに驚いたという。「当時は高校生が演劇を通じて交流することで左翼思想に染まると信じられていた」と振り返る。

「使いやすいハコ」と好評に

 1998年の特定非営利活動促進法(NPO法)施行を機に演劇の担い手を育てることを強く意識し始め、2007年に「NPO法人シアターネットワークえひめ」(TNE)を設立。2012年5月、閉園した幼稚園の園舎2階を借り受けて、「シアターねこ」を開館した。

 後ろほど高くなる階段式客席…

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この記事を書いた人
戸田拓
松山総局
専門・関心分野
文化、学術、音楽、動画