ノスタルジーと維新政治の帰結 大阪万博の「失敗」、松本創さん語る
「大阪・関西万博『失敗』の本質」。こんなタイトルの本が8月に出版されました。編著者は、関西を拠点に活動するノンフィクション・ライターの松本創(はじむ)さん。開幕前にもかかわらず「失敗」と掲げた意図は何か。取材結果を元に語ってもらいました。
軟弱地盤の会場、統制とれない運営主体
――来春に始まる大阪・関西万博は、既に準備段階から迷走している印象です。
会場建設費は当初の1250億円から2350億円に膨れあがり、海外パビリオンの建設は大幅に遅れ、参加国が独自に設計するパビリオン「タイプA」の出展は60カ国から47カ国に減りました。3月には建設現場でガス爆発も起きました。国民の関心は一向に高まらず、チケットも売れていません。
――背景に何があるのでしょうか。
外的要因としては、前回のドバイ万博の開催がコロナ禍で1年遅れて間隔が狭まり、参加国の準備が十分に整わなかったこと、ウクライナ戦争による世界的な原油や資材の高騰、そして、国内の建設業界の人手不足などが挙げられます。
これらに加え、軟弱地盤でアクセスも悪い大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)を会場に決めたことや、内部統制がとれているとは言い難い運営主体の日本国際博覧会協会(万博協会)の体制など、多くの問題をはらんでいると考えます。
大阪湾の人工島が選ばれた背景
――新著「大阪・関西万博『失敗』の本質」(ちくま新書)では、4人の共著者と共に、政治・建築・メディア・経済・都市の五つのテーマ別に問題点の検証を試み、指摘していますね。
私が執筆した「都市」の章では、今回の万博に至る歴史的文脈に焦点を当てました。大阪の都市政策の成功と失敗、そしてカジノです。
成功とは、大阪の街が明治以…