第3回中国との差別化に「死刑廃止」を 葛藤しつつも動き始めた台湾政治

有料記事廃死 台湾から死刑制度を考える

台北=高田正幸
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 「主席、あなたは死刑を支持しますか?」

 台湾総統選に出馬予定の野党主席に講演会で突然浴びせられた質問。主席は困ったような表情を浮かべながらも、「対話を通じてこそコンセンサスを生むことができます」とかわした。

 講演会後、主席のあいまいな姿勢を不思議がる陣営スタッフに先輩スタッフが解説する。「こんな時に表明できるわけがない」

 日本でもネットフリックスで配信された台湾の人気政治ドラマ「Wave Makers」の一場面だ。

 内心では死刑廃止を支持しながらも、総統選への悪影響を気にして立場を表明できない。そんな政治家の葛藤を描いている。

【連載初回】冤罪なのに「認めなさい」と裁判官 生還した元死刑囚が注目する裁判

死刑制度は廃止(廃死)すべきだ――。台湾で死刑囚37人が起こしたそんな裁判の判決が、今月に言い渡される見通しです。死刑賛成派が多い台湾で、なぜ死刑の是非が問われるのか。現地の関係者を取材して考えます。

 世論の8割以上が死刑廃止に反対の立場を示す現実の台湾社会で、死刑廃止の議論は、ドラマと同様に政治的に敏感なテーマだ。

死刑廃止に向けた歩みも

 総統選を翌月に控えた昨年1…

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この記事を書いた人
高田正幸
台北支局長兼香港支局長
専門・関心分野
台湾、香港、中国、反社会的勢力
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    能條桃子
    (NOYOUTHNOJAPAN代表)
    2024年9月19日14時0分 投稿
    【視点】

    死刑は「生きる権利」を国家の名において強制的に剥奪する究極の刑罰で、いったん執行されてしまえば原状に復することができない不可逆的な刑罰です。凶悪で残忍な殺人事件や無差別の大量殺人事件、テロ等によって、被害者の生命が奪われたとき、どのように社

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