長浜3病院再編 過半数の市議、独法・連携推進法人案を市側に提案へ
滋賀県長浜市内3病院の再編で焦点となっている経営形態について、市議会(定数22、現在は欠員1)の半数以上の市議が近く、独自案を浅見宣義市長に提出する。先行して公立2病院の「地方独立行政法人」化を見据え、将来的には民間を含む3病院で「地域医療連携推進法人」へ移行するのが望ましいとする内容。市は今年度中に実現可能性を調査し、可否を判断する方針。
市はすでに昨年9月、「指定管理者制度」導入の方針を発表している。「市立長浜」「市立湖北」の2病院を、「長浜赤十字病院」を運営する日本赤十字社に民間委託するというもの。
一方、議員側の対案は、複数会派や無所属の議員が共同で作成した。経営形態は、市立長浜、市立湖北の2病院で先行して地方独立行政法人の設立を見据える。その上で、一体的な医療提供に向け日赤側と協定を結び、将来的には地域医療連携推進法人へ移行するのが望ましいとしている。
このほか、急性期医療などを担う中核病院の場所は、市立長浜がある長浜市大戌亥町とし、病院間の診療科再編を速やかに行う▽回復期や慢性期を担う病院を中核病院に隣接して設置。一体運営することで、市民が診察を受けやすいペア病院とする▽医師派遣元の大学の協力を得るため、医師の技術向上につながり、働きやすい職場となる組織をつくる、ことなどを盛り込んだ。
今月11日に開かれた9月定例市議会の代表質問。市側の答弁で、市立湖北病院では今年、10人の病棟担当の若い看護師が「病院の将来に不安がある」として退職を予定していることが明らかになった。欠員募集に応募がなく、今後、看護師が確保できなければ入院診療を一部制限する可能性を示唆した。
対案を作成した議員の1人は「処遇などが激変する民間委託はハレーションが大きい。医療従事者のモチベーションが下がっている表れではないか」と指摘する。そして「対案は市民や医療従事者、大学にとって最もデメリットが少ない案。時間はかかるかもしれないが、将来的には医師の確保に向け、地域の病院や開業医が同じテーブルで協議できる地域医療連携推進法人のような会議体が必要だ」と話す。
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〈地方独立行政法人〉 地方自治体が直接実施する必要はないが、民間に委ねることは難しい公共上の事務・事業を遂行するため設立する法人。2004年に地方独立行政法人法が施行された。公立大学の管理や、病院などの公営企業に相当する事業、社会福祉事業の経営などを担い、出資者は自治体に限られる。設立には議会の議決を経て定款を定め、総務大臣または知事が認可する。総務省の4月現在のまとめでは、全国で165法人が設立されている。
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〈地域医療連携推進法人〉 医療機関や介護施設などを運営する複数の異なる法人が、共同で一つの法人をつくり、機能分担や業務連携により経営効率化を図る制度。都道府県知事が認定する。2017年に創設された。患者を奪い合う「競争」ではなく、病院間のベッドの融通や医療従事者の再配置、医薬品や医療機器の共同購入などで「協調」を図る。厚生労働省によると、全国で44法人(7月現在)があり、滋賀県内には3法人ある。
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〈指定管理者制度〉 公の施設を民間事業者などが管理する制度。民間事業者(株式会社、NPO法人、学校・医療法人など)のノウハウを生かし、多様化する住民ニーズに応えるのが目的。2003年の地方自治法改正で導入された。自治体は指定の手続きや業務範囲などを条例で定め、指定する際は議会の議決が必要になる。総務省の21年4月現在のまとめでは、全国の約7万7500施設で導入されている。
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