求む!「坂の上の雲」に共鳴する男子寮生 女子も受け入れたいが…

有料記事

戸田拓
[PR]

 明治の愛媛人を描いた司馬遼太郎作品「坂の上の雲」に共鳴できるなら、他県の学生でも寮の仲間に――。東京都東久留米市で愛媛の男子学生を受け入れてきた県人寮「常盤学舎」が、寮生の減少で新たな対策を打ち出した。入寮資格の「愛媛出身または愛媛にゆかりのある男子」の解釈を拡大して、県外の学生に門戸を開く。一方、「管理が困難」として、女子学生を対象としない方針は変わらない。

都内で月3万5千円

 常盤学舎は首都圏で進学する県出身の男子学生を受け入れる寮だ。前身の常盤会寄宿舎は、明治期に旧松山藩主の久松家が元藩士の子弟のため東京・本郷に設立。松山出身の俳人・正岡子規らが寄宿し、寮の監督を日露戦争で活躍した軍人・秋山好古らが務めた。

 戦後に東京郊外の東久留米市で復興。多くのOBが輩出し、寮祭やOB会などの活動も行われている。現在は鉄筋コンクリート5階建て寮舎に8畳部屋27室を構える。寮費は電気ガス水道代込み(エアコンの電気代を除く)で月3万5千円。共同浴室、自炊のための共用ミニキッチンもある。

「坂の上の雲」効果に期待

 だが近年、学生の地元志向や共同生活を避ける傾向が強まり、さらにコロナ禍が追い打ちをかけた。

 現在の寮生は浪人生を含む10人。15人を下回ると赤字という。運営する公益財団法人常盤同郷会(松山市、山崎薫理事長)は今年6月、「明治以来の伝統を絶やさないよう、危機感をもって寮生募集を積極的に行う」との方針を決定。寮近隣の大学やOBの子孫、さらに愛媛県に少しでも関わりのある学生への働きかけを強めることにした。

 常盤同郷会によると都内には常盤学舎を含めて4カ所の県人寮があり、県外学生らを受け入れて定員を満たしているところもある。山崎理事長は「会の定款は、学生寮について『主として愛媛県出身の学生が、関東地区の大学等に進学する際の経済的利便性を与え』としているが、管轄する愛媛県教委にも対象範囲の拡大について相談している」と話す。

定員割れでも、なぜ対象は男子学生だけなのか。記事後半で県人寮側の事情、女子の受け入れを求めて活動する学生らのNPOに話を聞きました。

 常盤同郷会は9月から始まった、日露戦争時に陸海軍で活躍した秋山好古・真之兄弟や子規らを描いたNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」(初回放送2009年)の再放送(総合テレビでは毎週日曜夜、全26回の予定)を好機ととらえた。県外の学生でも、ドラマや原作小説の感想を入寮希望の書類に書くなどすれば、「愛媛にゆかりがある」と認めることにした。

 対象者拡大の方針は、8月に…

この記事は有料記事です。残り1118文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
戸田拓
松山総局
専門・関心分野
文化、学術、音楽、動画